気仙沼の復興事業、被災者宅に「レッドゾーン」 土地区画整理で「重要事項」の説明なく換地
小原さんや春日さんが暮らしていた土地の一部が、宮城県によって土砂災害特別警戒区域に指定されたのは、震災の2年半前の2008年10月だった。県の担当者によれば、「土地所有者の住民を対象に説明会を開催するとともに、欠席された方には説明会資料を郵送している」という。しかし、小原さん、春日さんとも「指定の事実は知らなかった」としている。ただ、そのこと自体を2人が問題にしているわけではない。
「なぜ市役所は区画整理の際にレッドゾーンが含まれていると教えてくれなかったのか。もし知っていたなら別の場所への移転を希望していた」と春日さんは納得がいかない。
自宅の建築そのものが困難に
春日さんにはさらに深刻な事態が追い打ちをかけている。宮城県の建築基準条例で定められた規定を満たすことが難しく、自宅の建築そのものが困難になっていることが、工事業者の指摘によって新たに判明した。「地鎮祭を終え、外構工事に取りかかった直後に、その事実が分かった」(春日さん)。
「がけ付近に居室を有する建築物を建てる場合には、安全上支障のない擁壁を設けなければならない」。宮城県の建築基準条例第5条にはこのような規定がある。規制対象の範囲は、がけ下から居室までの距離が、がけの高さの2倍の範囲内にあるときだ。春日さんの場合、この規定を踏まえると、換地処分を受けた土地の約5分の3が規制対象区域に該当し、事実上、自宅の再建が困難になるという。
「地盤調査をしたうえで、崖崩れの危険があると判定された場合のコンクリート擁壁の建設には、約1000万円もかかると工事業者から言われた。そんなお金は出せないので、このままでは自宅の建築そのものができなくなる」(春日さん)。
疑問を感じた春日さんは「代替地の提供」を市役所に掛け合ってみたものの、「そのようなことはできません」の一点張り。春日さんは途方に暮れている。
東洋経済の取材に対しても気仙沼市は、「解決策を模索していく」(佐藤勉・都市計画課土地区画整理室長)というだけで、代替地の提供や擁壁の建設費用の負担など具体的な内容については言及を避けている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら