高齢被災者の住宅再建、「災害リバモ」で後押し 修繕に画期的な融資制度、拡大のカギは?

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特筆されるのが、半壊や一部損壊など建物被害の判定が比較的軽微であっても申し込むことができる点だ。

東日本大震災などの大規模災害では、住宅の被害の判定が大規模半壊以上であれば、「被災者生活再建支援金」の支給を受けることができる。修繕を目的として受け取れる支援金は100万円(単身世帯は75万円)。これが元手になる。

一方、半壊以下の被害は被災者生活再建支援金の対象外。それだけに、「半壊や一部損壊の家屋で暮らす被災者に、国の機関が支援の手を差し伸べたことは画期的だ」と、日本弁護士連合会で災害復興支援委員長を務める津久井進弁護士は災害リバモの商品設計を高く評価する。

8年も続いた損壊家屋での生活

石巻市の小松和子さん(74)の自宅は、半壊の判定だった。津波の被害は床下浸水でとどまったが、地震で住宅が傾いた。すきま風が入り込み、キッチンやトイレは修繕できないままだ。「このままでは健康も損なわれる」と考えた小松さんは災害リバモの説明を受け、3月中にも申請する予定だ。

津波の浸水被害を受けた家屋を一通り修繕するには最低でも500万~600万円かかる。しかし、資力が乏しい高齢者は修繕をあきらめることが少なくない。石巻市の住宅再建補助金(上限100万円)は、工事代金を被災者本人が立て替え払いすることが必要だ。資力がないために補助金を利用できない被災者は少なくない。

雨漏りが在宅被災者を苦しめる(宮城県石巻市)(記者撮影)

同じ石巻市の古座登美子さん(65)は、弟、長女との3人暮らし。修繕資金が不足し、生活できる部屋が2部屋しかない。その2部屋も家財道具であふれ返り、こたつに足を突っ込んでの雑魚寝生活を8年にわたって続けてきた。被災した自宅は雨漏りがひどくなっている。

古座さんも住宅金融支援機構からの災害リバモの融資を元手に、屋根や壁の修理を決めた。石巻市の独自補助金と併せた予算は約300万円。うち約200万円が災害リバモによるもので、1カ月の利息の支払いは3000円程度だ。古座さんを支援してきた前出の伊藤さんは、「住宅金融支援機構から災害リバモの承諾を得られたことで、住宅再建の道筋がようやく見えてきた」と安堵する。

このように災害リバモは画期的な制度だが、制度の仕組みが独特でもあり、被災者が独力で借り入れ実現にたどり着くことは難しい。住宅金融支援機構によれば、東日本大震災の被災者による申し込みの受理件数は2017年1月から今年1月までの2年間でわずか8件。熊本地震の112件と比べても少なさが際立つ。

そこで、融資実績増加のカギを握るのが、被災者に伴走しながらサポートするボランティアや専門職の存在だ。

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