高齢被災者の住宅再建、「災害リバモ」で後押し 修繕に画期的な融資制度、拡大のカギは?

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仮設住宅に入らずに、壊れた自宅に住み続ける「在宅被災者」を支援する伊藤さんは、住宅金融支援機構・東北支店東北復興支援室の村田健三シニアアソシエイトから「こんな制度がある」との説明を受けたのをきっかけに、ともに支援活動にたずさわる弁護士と災害リバモの勉強会を開催。以来、在宅被災世帯の住宅再建の最後の切り札として、災害リバモの利用を働きかけている。

「在宅被災者の多くは過酷な生活が続く中で、自宅の修繕をあきらめている。高齢者の多くは、自身が借入できるとも思っておらず、災害リバモの仕組みを理解することも容易でない」(伊藤さん)

そこでチーム王冠のボランティアが被災者宅を繰り返し訪問するとともに、不動産取引や相続に詳しい弁護士や建築士とも連携して、融資実現に取り組んでいる。

多職種連携で被災者を支援

冒頭の女性宅の修繕計画立案を手助けしたのは、二級建築士の藤井明人さん。女性のニーズを丹念に聞き取り、高齢夫婦が望む修繕計画の作成につなげていった。

震災から8年が過ぎても未修繕の天井(宮城県石巻市)(記者撮影)

古座さん宅の支援にかかわった中尾健一弁護士は「自宅に出向くことで生活実態や困りごとの詳細を知ることができた」と手応えを感じている。

こうした多職種連携による被災者個人に焦点を当てた支援活動は「災害ケースマネジメント」と呼ばれ、2005年に米国を襲ったハリケーンカトリーナの被災地で展開されたと言われる。石巻で取り組まれているボランティアや弁護士などによる支援活動も、災害ケースマネジメントに相当する。日本国内では、鳥取県が条例を制定し、鳥取中部地震の被災者を対象に災害ケースマネジメントを導入した。

津久井弁護士は、「被災者一人ひとりの復興を実現するために、大規模災害では災害ケースマネジメントの導入が急務だ。災害リバモも、災害ケースマネジメントの取り組みがあってこそ、活用が進む」と指摘する。

東日本大震災から8年、被災者一人ひとりに寄り添う支援の歯車がようやく回り始めた。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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