こうした採用アナリティクスは、自社の知名度が低く、優秀な大学の学生が集まらないと嘆いている経営者や人事担当者にとって朗報だ。なぜなら、この手法を用いることで、学歴にとらわれずに広く学生を集め、その中から「その企業にとって」優秀な人材を掘り起こすことが可能になるからだ。また日系企業が海外拠点において人材採用を行う場面でも、アナリティクスを活用すれば現地トップ大学の優秀な人材が、外資消費財メーカーといったグローバル企業へ流れがちな状況を食い止めることもできる。アナリティクスによって、日系企業の企業風土でも活躍できる人材を、資質やコミュニケーションスタイルといった面からプロファイルし、グローバル企業とは異なる基準で人選をすることで、他企業が気づいていない自社定義の「優秀人材」を獲得することが可能になる。
■採用マーケティングの進化
選考基準や選考の精度をアナリティクスにより高度化できたとしても、そもそもの選考対象の母集団が十分に形成できなくては効果が出せない。そこで、採用マーケティング、すなわち採用面談の母集団形成のために行う告知活動にも、アナリティクスを活用していくことが重要となる。
弊社の経験では、採用マーケティングに関する採用担当者の悩みは、2パターンある。ひとつ目は、厳しい予算制約の中でどのようにコストをかけずに効率的な採用マーケティングを行うか。もうひとつは、そもそも本当に欲しい人材は採用市場に出てこない、という点である。
ひとつ目の予算制約への対応策として、フェイスブックなどのSNS上の情報を分析し、ターゲットを絞り込んで採用告知を行うことでコストを抑制する方法がある。
たとえば、米国を中心に展開している飲食レストランのハードロックカフェは、イタリアフィレンツェへの初出店にあたり、フェイスブック上でターゲットを特定した採用告知を行った。この告知により十分な量のレジュメを収集できた一方で、採用コストを従来の12分の1の2000ドル程度に圧縮することができたという。
具体的には、「ロック好き、フィレンツェ在住、飲食業経験あり、イタリア語上級」といった基準で採用広告投下対象のターゲットを絞り込んで(1900人が対象)、フェイスブック上でのプロモーションを実施。その後は、彼らからのクチコミによる自然拡散によりさらに大きな母集団形成し(1週間で1万人以上の「いいね!」獲得)、最終的に120人の募集に対して4週間で4000人分のレジュメを取得した。
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