前編では、「採用」「定着化」に関するタレントアナリティクスを活用した成功事例をいくつか紹介し、これからの人事マネジメントにアナリティクスが必要になってきていることを示した(“アナリティクスは人事をどう変えるのか?”)。
中・後編では、実際にタレントアナリティクスはどのように導入し、その成否を分けるポイントとは一体どこにあるのかについて、他社事例を紹介しながら、タレントアナリティクスを効果的に活用するための5つのポイントをまとめた。
(1)人材を「ハコ」ではなく、「パフォーマンス」でとらえる
これまで日本の人事部門では、知識/スキル、コンピテンシーなどの要素が絡み合った「人材」そのものに焦点を当て、評価や異動を決めてきた。時に社員の人間性そのものも混じり合い、潜在的な可能性を推量しながら見極めることもあり、アナログ的な管理も多かった。
実際に皆さんも、①スキルは高いが“指示待ち”な社員と、②スキルは低いが積極的に行動し、結果を出す社員を評価しようとして、頭を悩ませたことはないだろうか。
しかし、今や人材もデジタルに分析・指標化する科学的なアプローチが可能となりつつある。現場任せのOJTや、固定化された階層研修から脱却し、適切な人材に効果的な育成や配置の機会を与えることで確実な結果につなげることができるようになってきている。
この人材に対する分析・指標化の手法を、「タレントアナリティクス」という。
タレントアナリティクスでは、人材の評価を複数の要素(=“パフォーマンスファクター”)に分解し、「その人材の価値=パフォーマンスの集合体」と見なしている。つまり、タレントアナリティクスでは人材とは知識、スキル、経験などの要素が入った器ととらえており、内在している要素に焦点を当てて能力や評価、最適なマッチングなどを割り出すことになる。