こうした人材可視化の失敗を繰り返さないためには、前述したとおり、膨大なデータの中から、成功するための一定の「パターン」を見いだすことが重要になる。
つまり、スキルや業績といった人材情報を収集する際に目的を明確に持ち、統計的スキルによって焦点を当てるべきパターンを具体化できれば、スーパージェネラリストでなくとも、結果を出すことはできる。
またパターンは、ひとりの人材のパフォーマンスをみるだけでなく、チームのパフォーマンスを高めるうえでも活用可能だ。
たとえば優秀なメンバーを集めたチームよりも、二番手あたりの人材が集まったチームのほうが高い営業成績を出すことがあると言われる。こうした場合、それぞれのチームメンバーのパフォーマンスファクターを分析すると、二番手中心のチームメンバーは、自身の成果よりも他者との「協調性」を優先する要素を持っていることがわかったりするのだ。つまり、個々のスキルよりも、この「協調性」が高い営業成績を残すために必要なパフォーマンスファクターだということがわかる。
非常にシンプルな例だが、このように結果を出すチームのパターンが具体化されることで、組織の結果につながるメンバーの組み合わせをデジタルに判断することができる。
(3) 人事は「アルゴリズム」を管理する
成功パターンデータの収集・分析を通じて、人事部門には事業の成果を生み出す人材と、その素質、効果的な育成が可視化されてくるようになる。
人事部門は、この知見を体系化し、「アルゴリズム」(組織や人材を成長させるための方程式)として業務プロセスの中に落とし込んでいくことになる。そしてこの「アルゴリズム」を管理・運用することによって、課題や必要な人事施策、正確な将来予測を得ることができるのだ。
人事部門は、こうした従業員にかかわる具体的なデータ(数字)によって、経営層と全社的かつ長期的な視点に立って事業成長のための人事戦略をディスカッションできるようになる。