アナリティクスは人事をどう変えるのか? アナリティクス全盛時代の人材マネジメント(上)

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(1)「いい社員」の基準が変わる

ここ数年、社内で活躍している人材の特性を分析して、選考基準の設定・選考に生かしている企業が増えてきている。たとえばGoogle社は、採用活動時の書類選考にあたって、SAT(Scholastic Assessment Test: 日本でいうセンター試験の成績)やGPA(Grade Point Average: 大学での成績)ではなく、独自の基準でふるい分けを行っている。米国では選考時に大学名とともに成績を加味することが「当たり前」になっている中、Googleのこの動きは先進的である。

GoogleのPeople Analytics部門(Googleには人事部内に人事系の分析をするチームすらある!)を率いるPrasad Setty氏がニューヨークタイムズ紙の取材で話した内容によると、社内のハイパフォーマーの分析の結果、大学名や成績といった情報よりも、もっと重要な要素があるという。

一時期、Google社には月間10万通のレジュメが届いており、いかにしてそのレジュメの海からダイヤの原石を見いだすかが課題になっていた。そこでGoogle社は、自社の社員の行動、資質、各種経歴と社内での成績に関する情報を分析し、入社後に高い成果を出す候補者の属性を導き出した。その条件を踏まえ、一定のアルゴリズムをもって分析した結果、ある起業家的な行動をとれる人材のほうが、成果を出す確率が高いことがわかったということだ。

この結果、GPAに偏重したスクリーニングをしていた時期に、実は大きなポテンシャルを秘めた候補者を見逃していたことが確認されるとともに、その後の採用プロセスの効率化と、優秀な人材の獲得につながったという。なんともGoogleらしいやり方ではないだろうか。

同様に、社内の好成績者を分析して採用に生かしている例は数多くあるが、意外なところではプロフェッショナルスポーツの分野でも、イタリア・ミラノを本拠地とするサッカークラブチームACミランがアナリティクスを選手獲得に活用している。

ACミランにとって選手の獲得は大きな投資だ。数億円の契約金を払って優秀なプレーヤーを獲得しても、すぐに故障者リスト入りされてはたまらない。そこでACミランでは、ただ優秀かどうかだけでなく、ケガをする確率の低さ、すなわち継続的に活躍できる確率の高さを踏まえた選手獲得を行っている。具体的には、身体的特徴、心理的な特徴、体の動かし方などのデータを収集・分析し、継続的に活躍できるか否かの予測をしている。たとえば、ジャンプの仕方を見れば、70%の確率でケガをしやすいかどうかを予見できるそうだ。ACミラン入りした日本代表の本田選手獲得の裏ではこの頑強性がチェックされていたに違いない。

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