京都が「観光公害」を克服するための具体的方策 「オーバーキャパシティー」に打つ手はあるか
アムステルダムにとって、オーバーキャパシティーは、コミュニティーの存続を揺るがすところまで進展しており、非常に大きな問題です。
そこでアムステルダムは、「総量規制」と「誘導対策」の両輪を回しながら、問題の緩和に取り組み始めています。
アムステルダムが行っている「総量規制」は、次のようなものです。
・加えて、中心部ではホテルの新規建設も禁止
・市内への観光バスの乗り入れを禁止
・中心地では観光客を目当てにした店の出店を規制
2017年には、目抜き通りに出店した観光客向けのチーズ店を、市が裁判にかけて閉鎖させましたが、店舗側は規制条例の適用外だと反発し、市側と衝突していました。
次に「誘導対策」としては以下のようなものがあります。
・観光バスの市内乗り入れを禁止。バスは幹線の外側に駐車して、観光客はそこから徒歩や公共交通機関、タクシーなどで市内に入る
・特典を付与したアプリを観光客に配り、彼らの動向をデータ化して、いつ、どこが混むかを分析。中心部の観光名所に人が密集しないように、周辺の人気スポットや飲食店を紹介、推奨する試みを開始
・アムステルダムから30キロ圏内にある「サントフォールト」のビーチを、「アムステルダム・ビーチ」に改称して、市域内という感覚を強調。市内の交通カードが使えるエリアに組み込んだ
アムステルダムと同様の「総量規制」は、バルセロナでもすでに始められています。例えば、2019年以降の新規ホテル建設の禁止や、バルセロナ大聖堂とその周辺での店舗の24時間営業を禁止することなどです。
こうした規制は、観光産業が持つ経済的なインパクトの低下という、マイナスの側面も併せ持ちます。実際にバルセロナでは、ホテルの新規建設の凍結が決まったことをきっかけにフォーシーズンズホテルなどの大手資本が撤退。その損失は雇用の消失とともに30億ユーロ(約3750億円)に上るとの試算が出ています。
日本が観光「亡国」にならないために
日本では、観光促進ばかりがいまだに追求されている感があります。しかし、アムステルダムやバルセロナの例を見てもわかるとおり、世界の観光先進国では、すでにそれがもたらす副作用をどのように捉え、その経済効果とどう調整を図るか、を検討する段階へと進んでいるのです。
現在では「観光公害」の事例が日本のみならず、世界中で見られています。対策を考えるベースはできているのです。日本もそこから習って、適切な解決策を取れるはずです。
なお私は「観光反対!」ということは、決して言っていません。むしろ観光による「立国」に大賛成ですし、今後もそのための活動を続けていくつもりです。
実際、インバウンドは日本経済を救うパワーを持っています。国際的な潮流を日本の宿や料理に吹き込むことによって、新しいデザインやもてなしも生まれていきます。観光の促進は、日本への理解を国際的に高め、日本文化を救うチャンスであり、プラスの側面は大きいのです。
ただし、それらは適切な「マネージメント」と「コントロール」を行ったうえでのことだと強調したいのです。前世紀なら「誰でもウェルカム」という姿勢のほうが、聞こえはよかったかもしれません。しかし、億単位で観光客が移動する時代には、「量」ではなく「価値」を究めることを最大限に追求するべきなのです。
そして日本も押し寄せる外国人観光客の増加に危機感を持ち、今すぐ備えなければ観光「立国」どころか、「亡国」となりかねない。それこそが今、著者が『観光亡国論』を執筆した理由にほかなりません。
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