即席麺でナイジェリアとインドに出る旨み 味の素、東洋水産が海外展開で強力タッグ

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日本企業にとって理想的な市場は、当然、ほかの海外食品メーカーにとっても魅力的だ。すでにインドではネスレが、ナイジェリアではインドフードが、それぞれ7割と圧倒的なシェアを持つ。日本勢では、インドで日清食品が1990年から即席麺の製造販売を展開しているが、08年で約11パーセントあったシェアが直近で4.5%程度まで落ちている(ユーロモニター調べ)。

ナイジェリアでは今年8月、サンヨー食品が現地に販路を持つシンガポールの商社と合弁を設立しているが、シェアは1割未満と存在感がまだ小さい。こうした状況を逆にチャンスと捉え、東洋水産の即席麺製造技術と、味の素がナイジェリア、インドで持つ営業拠点と人員を結集させ、シェア拡大を目指す考えだ。

進出先に応じて、最善の相手と組む

それだけでなく、味の素は北米での冷凍食品事業の強化も発表した。東洋水産と米国で冷凍製麺の生産で合弁会社を設立し、同国で市場が拡大している焼きそばなどの製造を東洋水産の技術をバックに拡大していく構え。つまり、味の素と東洋水産は同時に3カ国での合弁設立を発表した。

M&Aや出資、合弁など味の素の海外展開は多彩

今回は東洋水産と手を組んだ味の素だが、ブラジルでは1975年以来、日清食品と合弁で即席麺事業を展開している。今年11月には、トルコの老舗食品企業と合弁設立を発表し、製麺事業展開の可能性について言及したばかり。

「16年までに海外売上高3000億円(13年3月期1995億円)」という目標達成に向け、進出先ごとに最善のパートナーと組んでいる。味の素が11月に打ち出したグローバル成長戦略では、20年までにタイ、ブラジル、インドネシア、ベトナム、フィリピンの売上高を2~3倍にするとしている。詳細は14年2月にも公表する中期経営計画で明らかにされる見通し。

グローバル成長戦略では、M&Aや出資、合弁などを通じた外的資源の活用を公言しており、これまでのような単独で現地法人を設立し地道に事業拡大を狙うという手法にこだわらず、多様な形で海外市場の獲得に動くことが予想される。

新興国市場の開拓は待ったなし。現状、欧米の食品メーカーに水をあけられている日本勢はどこまで追い上げを見せるのか。味の素や東洋水産のみならず、日本勢の海外展開はいっそう熱を帯びそうだ。

(撮影:今井康一)

田嶌 ななみ 東洋経済 記者

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たじま ななみ / Nanami Tajima

2013年、東洋経済入社。食品業界・電機業界の担当記者を経て、2017年10月より東洋経済オンライン編集部所属。

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