エジプトで"味の素"を売り込む秘訣

エジプトの食卓に革命を起こす男(中)

 政情不安と経済危機に直面するアフリカの国で、商機を見いだす日本の食品メーカーがある。2年前にエジプト進出した味の素だ。援助でも投資でもなく、あくまでビジネスのプレーヤーとして、着実に庶民の胃袋に食い込み始めている。
 人口増で成長が続くアフリカ。これから日本企業はこの「最後の巨大市場」とどう付き合っていくべきなのか――。アフリカでビジネスを展開する味の素の現場を訪ね、その強さの理由に迫る。
 ※ 連載第1回目はこちら:なぜエジプトで”味の素”が売れるのか?
街頭ではいきなり試食も。エジプト料理と味の素との相性をアピール。

大規模な宣伝を打たずに、エジプト市場に浸透していった味の素。エンドユーザーに近いところで行う手売り営業は、認知度の薄い商品であっても、狙った購買層にダイレクト届けられる。

さらには、多くの人の目につくこうしたリテール活動自体が、絶大な広告効果を生み出していった。

うたい文句は「ロッズに味の素」

首都カイロは膨張を続ける都市である。中でもナイル川の西に広がるインババ地区は、「カイロの中国」と呼ばれるほど人口が密集し、増加も著しい。しかも住民の大半は所得の低い庶民派層。

もちろんこのインババは、味の素の重要な販売地域である。そんな町でセールスマンたちが欠かさず訪れるのは、コメやパスタ、豆、小麦粉などを扱う店だ。生鮮品以外のさまざまなものを売る食料雑貨店である。

ほとんどの穀類と豆類は量り売りのため、箱などに入れられ店頭にそのまま山積みされている。そして、セールスマンたちは商取引と同時に、商品の山からコメにだけチラシを突き刺す。すぐ横には写真入りステッカーもぺたり。宣伝文にはこう書かれていた。

 ―あなたのロッズが25ピアストルでもっとおいしくなる―

食料品店のコメの山を目がけ、セールスたちはチラシを射し込む

25ピアストル(約4円)は味の素の小袋1つの値段だ。たったそれだけのコストでおいしくなるという「ロッズ」とはコメ、つまりエジプト流で炊いたご飯のことである。

エジプト人の主食はパン。全粒粉を使ったアエーシ(円形の薄いパン)が最も食べられているが、米食も少なからず行う。ただし、日本のように水だけでシンプルに炊くのではなく、まず生米を炒め、塩を加えてから炊く。多くの場合、ここに短いパスタもいっしょに炊き込むので、日本人に親しみのある白飯とはかなり様相は異なる。炊き上がりの味わいは、そのまま食べられるピラフに似ているだろう。

店先に張ったステッカーには、鍋に入ったこのロッズと、上から振りかける味の素の写真が中央に配置されている。

ロッズに味の素を使うという提案。味の素はコメ料理に合うと商品説明し、それを繰り返すこと。これこそが無名の調味料・味の素を、エジプト人に売り込む“秘策”だった。

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