エジプトで"味の素"を売り込む秘訣 エジプトの食卓に革命を起こす男(中)
キーメニューはひとつに絞り、一点突破
「キーメニューを発見し、一点突破で味の素を普及させていく。ロッズを選んだというのは、何百通りかある中で唯一の当たりくじでした」(エジプト味の素食品・宇治弘晃社長)。
味の素と相性のいいエジプトの食べものはなにか。味の素を合わせて最も効果が上がる料理はなにか。エジプトに進出して真っ先に着手したのは、味の素との使用を勧める現地料理の「キーメニュー」を探す作業だった。
まずはスークに出向き、ひたすら売られているものに味の素をかけて食べたという。ナスの炒め煮、揚げイモ、ターメイヤ(そら豆コロッケ)にフール(そら豆スープ)、キュウリとトマトのサラダなども試した。日本人社員は2人。彼ら自身の舌で連日検証が続けられた。
最初にキーメニュー候補として選んだのは、「トゥルシイ」と呼ばれる野菜のピクルスだった。ニンジンやカブなどを使ったエジプトの漬物。それは膨大な試食と苦労の末、ようやくたどり着いた食材である。大きな自信と、涙も流さんばかりの達成感さえあったという。
しかし、実際に街頭でエジプト人に試食してもらうと、嗜好性はたった50%。味の素の有無で食べ比べをした結果、半数の人が味の素をかけたトゥルシイをおいしくないと判別した。宇治さんは当時をこう振り返る。
「エジプト人は、トゥルシイを『酸っぱくて塩辛い』と思っているので、味がまろやかになる味の素は好まれない。それがわかってガッカリでした」
突きつけられた微妙で深い食習慣のギャップ。まずはファラオの国からきつい洗礼を受ける形となった。
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