なぜ味の素はアフリカ市場で強いのか?

エジプトの食卓に革命を起こす男(下)

 政情不安と経済危機に直面するアフリカの国で、商機を見いだす日本の食品メーカーがある。2年前にエジプト進出した味の素だ。援助でも投資でもなく、あくまでビジネスのプレーヤーとして、着実に庶民の胃袋に食い込み始めている。
 人口増で成長が続くアフリカ。これから日本企業はこの「最後の巨大市場」とどう付き合っていくべきなのか――。アフリカでビジネスを展開する味の素の現場を訪ね、その強さの理由に迫る。
 ※ 過去の連載はこちら:
第1回:なぜエジプトで”味の素”が売れるのか?
第2回:エジプトで“味の素”を売り込む秘訣
味の素の商品自体が、アフリカBOP市場との高い親和性を持つ

治安の悪さ、人材の不足、未整備のインフラや物流環境・・・。アフリカの現状を見れば、日本企業が進出に二の足を踏む理由には事欠かない。

政治混乱が続くエジプトでは、悪化する治安への不安から観光客は激減。海外からの投資も減少の一途で、外貨準備高は危機的な水準まで落ち込んだ。IMFとの緊急融資交渉もまとまらず、いまや財政は破綻寸前といわれる。しかし、宇治さんたちは「そんなものはリスクじゃない」と言い切る。

エジプト味の素が展開するBOP(ボトム・オブ・ピラミッド)市場の開拓は、徹底した現地化であり、販売する商品は人々に圧倒的な訴求力を持っている。貧困層の需要に寄り添ったアフリカとの新たな付き合い方。そこにはアフリカ市場が抱えるリスクを、チャンスに変じる可能性さえある。

「肉がなくても肉の味」

エハーブさんの家ではロッズ作りに味の素は欠かせなくなった

エハーブさんは41歳。カイロ市内のアパートで、妻と2人の子どもと暮らす平均的なエジプト人だ。彼は毎日の朝食に卵料理を食べているが、最近ここに味の素をかけるようになった。

「豆のスープにも合いますよ。味の素を使うと、肉を入れたような感じになる。ほとんど肉がないのにね」

実際の調理に味の素をどのように使っているか見せてもらった。妻のラニアさんが準備したのは、もちろんロッズ。適量かどうか分からないが、大鍋には炒めたコメと3グラム入りの味の素2袋を投入する。台所には63歳になる母親も登場。味見しながら「味の素を入れると風味が良くなる」と笑顔を向けた。

エハーブ家では家族みんな味の素の愛用者だ。その味は子どもから高齢者まで受け入れられている。

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