子育ては本来、楽しくて幸せに満ちたものであるはずです。ところが、実際は、楽しむどころか毎日苦しくてたまらないという親たちがたくさんいます。なぜそうなってしまうのでしょうか?
ひとつ大きな原因として考えられるのが、親たちの「比べる病」です。私は長年教師として数多くの親子と接してきましたが、そこで気づいたのは、親たちはみんな子どもを比べることで苦しんでいるということです。これは親ならみんなかかる一種の病気のようなもので、私は「比べる病」と呼んでいます。
ワーキングマザーMさんの場合は…
親はよくわが子をほかの子と比べます。隣近所の子と比べ、クラスの子と比べ、親戚の子と比べます。スポーツ教室に行けばそこにいる子と比べ、ピアノ教室でも比べ、学童保育でも比べます。そして、比べることで苦しくなります。なぜなら、常に「隣の芝生は青い」からです。ある子はわが子より勉強ができ、また別の子はわが子より運動ができます。さらに別の子はわが子よりテキパキ行動でき、また別の子はわが子より挨拶が上手です。
これは、ワーキングマザーMさんから聞いた話です。彼女の小学6年生の長女・Kさんは、最近お手伝いをよくするようになりました。以前は親に言われて渋々だったのですが、最近は自ら洗濯物を取り込んでくれます。また、食後の食器洗いもよくやってくれるようになりました。それでMさんは喜んでいたのですが、ある日ママ友との会話で、その家の小学5年生の娘さんがもっと多くのお手伝いをしていることを知りました。洗濯物もただ取り込むだけでなく、ちゃんと畳んでくれるそうです。
その話を聞いてから、Mさんは急にKさんのお手伝いが物足りなく感じられるようになってしまいました。そして、次の日、Kさんに「洗濯物を取り込むだけでなく、畳んでくれてもいいのに」と嫌みを言ってしまいました。比べることで、親も子も不幸になってしまったのです。比べる前は、わが子自身の成長を喜んでいたのですが……。
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