損保ジャパン、巨額買収でライバル追撃 英国の損保会社に1000億円

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大手損害保険NKSJホールディングス子会社の損害保険ジャパンが、英国中堅損保キャノピアスの買収に踏み切る。買収総額は992億円に上り、NKSJグループにとって過去最大規模のM&Aだ。

現在、発行済み株式数の95%を握るプライベートエクイティファンドや残る株式を保有するキャノピアスグループの役職員から全株式を買い取り、2015年3月期から連結決算に加わる。

キャノピアスは、英国のロイズ保険市場で第10位の引受規模を誇り、欧州各地や米国、シンガポールなどに展開。再保険や海上保険などの専門性の高い分野に強みを持つ。2012年12月期の総収入保険料は968億円、税引き後利益は65億円に上る。

海外展開で出遅れ

大手損保グループにとって、海外損保事業は生命保険と並び、成長性が見込まれる分野だ。他社も積極的にM&Aによる事業拡大を進めている。

東京海上ホールディングスは、08年に約1000億円で英キルン、約5000億円で米フィラデルフィアを買収。12年にも約2000億円を投じて米デルファイを傘下に収めるなど、巨額買収を実施。東京海上が経営面での重要指標に位置付ける「修正利益」で見ると、米欧の保険事業が国内の損保事業をしのぐ規模になった。

またMS&ADホールディングスは、04年に約500億円を投じて英AVIVAのアジア事業買収。これにより、ASEAN全10カ国での正味収入保険料の規模が業界トップになった。アジアでは非日系企業との取引が7割を超える水準に達する。

一方、NKSJは国内では3メガ損保グループの一角を形成しているものの、海外展開では東京海上、MS&ADに遅れを取ってきた。海外損保事業の正味収入保険料(2013年3月期)では、東京海上の6830億円、MS&ADの2878億円に対して、1275億円にとどまっている。

NKSJは今回の買収により、国別では業界10位クラスのブラジル、トルコ、マレーシアに続いて、英国でも足場を築くことになる。また、ここ数年力を入れている再保険ビジネスでも、キャノピアスの買収によるシナジー効果も期待される。

過去最大の買収に打って出たNKSJ。グローバル展開の基盤を整え、ライバルとの差を縮められるか。

(撮影:吉野純治)

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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