日本企業の「人事評価」に欠けている2つの視点 過去の業績だけで評価すると限界がある

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例えば、コーナーストーンでは「9グリッド(ナイングリッド)」と呼ばれる9つのボックスに「業績」と「可能性」の2軸を3つのレベルに仕切った9つのボックスを使い、対象者をプロットします。

X軸は業績、つまりパフォーマンス。これは年度初めに設定したゴールに対しての業績評価です。Y軸は可能性、つまりポテンシャル。これは会社の企業理念や価値観に基づいて、企業価値を実現するために備えるべきコンピテンシー(必要な能力)をどの程度身につけていて将来の業務に生かせるかという視点です。

将来の価値を評価することの利点は?

コンピテンシーには、ビジネスを遂行する能力としていくつか行動に伴う定義がされています。そのうち組織共通となるもの、例えば、主体性を持って取り組むこととか、優れたコミュニケーション力とか、粘り強く解決に導くとか、顧客視点で物事を考えるなど(実際にはもっと行動に伴う定義がされています)と、部門固有の専門コンピテンシー、専門的な知識や経験の深さで構成されています。

将来の価値を評価することの利点は、将来的な個人主体の課題や可能性を上司が明確に観察できることです。するとその個人への適切な指導や教育が自ずと見えてきて、上司はフィードバックを通じて育成への道筋を立てることができます。将来を見据えた個人主体の課題は、自律的な学習につながり、社員はそれに取り組むことができます。個人の成長を促すための評価になるわけです。

例えば、営業部員のAさんは、毎年高い営業成績を上げていましたが、昨年度は営業成績が落ち込みました。単年度の業績評価は未達成として悪いものになるのですが、ここで上司は、Aさんの「将来の価値」を評価の際に考えます。

Aさんは顧客視点に立った提案を行うことができ、顧客との信頼関係を築いています。また、他部署の専門家も必要に応じて巻き込んでプロジェクトを進めており、社内外問わず、対人関係の構築能力が高いと上司は評価しています。

一方、営業畑をずっと歩んできたAさんは、マーケティングについてはあまり深い知識を持ちあわせていません。今の時代、顧客が購買するまでの流れは、営業活動の前にWebやデジタルマーケティングから始まっています。購買サイクルが以前より短くなってきており、よい対人関係を築く前から動くことも必要になっています。

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