普通、拘束時間が長いのにもかかわらず給料が安い仕事には、人は集まりません。ところが「仕事は正直きついです、でもやりがいはあります!」と仕事のやりがいを前面に押し出すと、やりがいを重視する人たちが集められるようになるのです。
経営者側からすれば、これを利用しない手はないということになります。
実際、「やりがい」を重視して働く人たちの中には、残業代も出ない、土日もろくに休めないような状況で、自分の能力をフルに使って「いい仕事」をしてしまう人たちがいます。本来、いい仕事をする人を雇いたいと思ったら、それ相応の給料を払わなければなりません。契約で決めた労働時間よりも長く働いてもらいたいと思ったら、残業代や休日出勤手当を出す必要があります。
しかし、「やりがい」という報酬を用意すれば、安い給料で、残業代もろくに払うことなく、とてつもない労働力を得ることができてしまうのです。
「やりがい」はあくまで仕事のおまけ
こういった「やりがい」を利用した悪質な搾取に引っかからないようにするためには、仕事についての考え方を見直さなければなりません。
そもそも、仕事とは「労務」を会社に提供して、その見返りとして「給料」をもらう行為です。
この関係が正しく成り立っていないものは、どんなに「やりがい」があったとしても、仕事と言ってよいかどうかは疑問です。
仕事に「やりがい」があるからといって、その分安い給料でもいいとか、残業代が出なくてもいいとか、そういうふうに考えること自体が間違っています。「やりがい」の有無に関係なく、給料は働きに見合った分もらえて当然ですし、残業をしたら残業代だってもらえなければおかしいのです。
個人の価値観として、「やりがい」のある仕事に就きたいと考えることは勝手です。ただ、その「やりがい」を得るための代償に、労働条件について妥協するのは間違っています。「やりがい」はあくまで仕事のおまけにすぎず、働きに見合った分の給料や残業代をしっかりもらったうえで、もらえるならもらっておこうぐらいの意識が、いちばん無理がないのではないでしょうか。
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