「やりがいある仕事を探せ」というムチャ振り ブラック企業にとって「やりがい」ほど美味しいものはない

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自己実現は仕事でしなければならないのか

仕事の「やりがい」が強調される背景には、「人は仕事を通じて自己実現をしなければならない」という価値観が存在しています。

つまり、「やりがい」を重視する人にとって、仕事とは単におカネを稼ぐ手段であるというだけでなくて、自分の夢をかなえる手段でもあるということです。

確かに、これはひとつの考え方ではあります。仕事と自分のやりたいことがピッタリと合致しているというのであれば、おカネをもらいながら自分の夢もかなえられて、一石二鳥ということになるかもしれません。

しかし、実際にこのような働き方ができる人はわずかです。

そもそも、自分の夢が仕事として成立していなければ、どうしようもありません。たとえば、「一日中家でゴロゴロ寝て暮らす」というのが自分の夢だったとしても、「一日中家でゴロゴロ寝て暮らすだけの仕事」は存在しないのです。

また、たとえ自分の夢が仕事として成立していたとしても、そういう仕事に必ず就けるとは限りません。たとえば、「プロ野球選手」は確かに職業としては存在しますが、その職業に就ける人はほんのわずかです。

そういう意味で、「やりがい」のある仕事に就いて自己実現ができるのは、一部の才能に恵まれた人や、運のいい人だけに限った話ということになります。

問題なのは、そういった一部の恵まれた人にしかできない生き方のみが正しく、みんながこのような生き方を目指さなければならないと考えられていることです。

別に、仕事の「やりがい」なんて感じられなくても、粛々と仕事をして給料をもらい、そうやって稼いだおカネを使ってプライベートに全力投球するというのも、ひとつの考え方です。そんなふうに、仕事の「外」で自己実現をするという生き方も普通にアリだと思うのですが、どうも日本ではこういう割り切った生き方をすることは、よくないことだと思われているようです。

それゆえ、多くの人が「『やりがい』のある仕事につかなければならない」という強迫観念にとらわれてしまっているのです。

ブラック企業にとって「やりがい」ほど美味しいものはない

このように仕事の「やりがい」ばかりが重視される風潮は、労働条件が劣悪な企業にとって、実は非常に都合のよいものになっています。

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