くら寿司「悪ふざけバイト」の告訴に広がる波紋 批判あるが「不適切動画問題」へ一石となるか
くらコーポレーションは法的措置を検討するに至った理由について「上場企業としての責任を果たす」「約3万3000人の従業員の信頼回復」といった理由に加え、「多発する飲食店での不適切行動とその様子を撮影した SNS の投稿に対し、 当社が一石を投じ、全国で起こる同様の事件の再発防止につなげ、 抑止力とする為」としている。
こうした動きに対し11日、セブン-イレブン・ジャパンも前述した“しらたき”を不適切に扱ったアルバイト店員2人に対して法的措置をとる意向を示した。
もちろん、まだ高校生のアルバイトとはいえ、従業員に対する教育責任が雇用者にもあるのではないか、個人に対する罰としては重すぎるのではないかとの指摘もある。しかし、“社会通念上、許されない行為”の認識を雇用主だけに背負わせることは合理的ではない。
なぜならば、問題を引き起こしているアルバイト店員の大多数は両親などの庇護下にあるからだ。雇用関係の維持に対してこだわる必要がない彼らに、雇用者が徹底した倫理観を植え付けるのは無理な話だ。
くら寿司のケースでは、食品衛生法上の問題、あるいは営業面では威力業務妨害、不衛生に扱った器具が使えなくなったのであれば、器物破損などに問われる可能性がある。このことを教える責任は、家庭はもちろん学校などの教育機関にもある。
現在のスマートフォンの原型とも言える初代iPhoneが発売されたのは12年前、2007年のこと。SNSの普及も同時期だが、日本でのSNS利用やスマートフォン普及が加速したのは2011年の東日本大震災が1つのきっかけだった。震災の混乱が収まり始めた2013年ごろから、SNSを通じたバイトテロが急増したが、それからすでに5年以上が経過している。
“悪ふざけでは済まない”という共通認識を、家庭や教育機関も含めて強く持つべきだろう。社会全体で問題意識を共有するきっかけにしたいと、くらコーポレーションが考えているのであれば致し方ない面はあるだろう。
スマートフォンとインターネットは、もはや生活の一部である。“誰でもSNSで情報発信できることのリスク”について、もはや「知らなかった」「禁止すればいい」「どう対処していいかわからない」では済まない時代。バイトテロ対策について、その責任を雇用者に求めるだけでは解決できない。
「雇用契約」の見直しが必要
一方で企業側も自衛手段は必要だ。教育だけでは解決できないかもしれないが、業務に関連した情報をSNSで発信することに関し、ガイドラインを作成して明文化。この中で、SNS発信がどのような社会的影響を与えるか、その影響範囲についても記述しておきたい。
「友人同士のやりとりのつもりでも、世界中の人から情報を見られていること」「友人以外でも情報共有する可能性があり、ものの数分もあれば撤回できない状況になる場合があること」「自分の情報発信によって大きな経済損失が生まれ、その責任が発信者に課せられる可能性があること」――。スマートフォンを子ども達が使うようになった社会的背景の中で、教育現場での対応は進んでいるが、学校における“SNS教育”と職場における禁止事項を具体的に関連付けるなど、リスクを想起しやすい内容を盛り込むことが望ましいが、その際に気をつけたいのは若年層とのSNSに対する認識、肌感覚の違いだ。
近年のバイトテロは、短時間で自動的に消えるインスタグラムの「ストーリーズ」という機能を発端にしたケースが増えている。2013年のバイトテロブーム時は、ツイッターの共有範囲に関する無知が引き起こした側面もあった。SNSの使い方の変化を大人たちも理解する必要がある。
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