くら寿司「悪ふざけバイト」の告訴に広がる波紋

批判あるが「不適切動画問題」へ一石となるか

最悪だったのは2013年、個人経営のそば屋「泰尚(たいしょう)」の倒産事件だろう。食器や食洗機などを不衛生に扱った写真の投稿を発端に休業に追い込まれた同店は倒産。さらに2015年になると、「すき家」のアルバイト店員が店内でわいせつ画像を撮影して投稿するなど、いわゆる第1次バイトテロとも言える時期が続いた。

こうした問題が目立つようになった背景には、スマートフォンとSNSの普及により、写真や動画を簡単に誰もが撮影可能となったうえ、発信もしやすくなったことが挙げられるだろう。過激動画や写真を発信することによって、非日常的な注目を集め、虚栄心を満たす“悪ふざけ”の増加は、必ずしも日本だけの現象ではない。

後を絶たない不適切動画投稿……バイトテロ問題の本質は、事件を起こす本人に対するリスクが小さすぎることだ。そうした意味では「くら寿司」が、バイトテロ事件を起こした元従業員2人を刑事・民事で告訴したことが流れを変えるきっかけとなるかもしれない。

小さすぎる“悪ふざけ”の代償

事件のほとんどは学生アルバイト、あるいは20代前半までの非正規雇用者であり、社会的責任の欠如などを指摘する声もある。中でも高校生アルバイトの場合、経済的には保護者に依存しているため、雇用契約の解除がバイトテロの抑止力になりにくい。

2007年の「テラ豚丼」で最も大きな被害を被ったのは、フランチャイズ契約を取り消されたアルバイトの雇用者だった。ブロンコビリーの場合も、投資回収がまだ進んでいない店舗を閉鎖せざるをえなくなった出店企業側が損を被る形だ。バイトテロにおける事例では、店舗の閉鎖や該当従業員の解雇といった解決策が取られるものの、行為を行った個人に対する責任追及は甘い。

そば屋「泰尚」の例では写真投稿に関わったアルバイト4人が民事賠償起訴された。原告側は倒産時にあった3300万円の負債のうち、休業後の事業機会損失や従業員への給与支払い分など1385万円を請求、その後、和解したが和解金は4人分合計でも200万円にすぎなかった。

以前よりも虚栄心を満たす愉快犯が生まれやすい環境が生まれている中、悪ふざけの代償が小さすぎるのだ。

2月5日、回転寿司チェーン店のくら寿司の守口店のアルバイト店員がゴミ箱に廃棄された魚の切り身を、ゴミ箱から拾ってまな板に載せなおした動画が投稿された。調査の結果、実際に廃棄された切り身が顧客に提供された事実はなかったようだが、衛生面で特に配慮が必要な生魚を扱う店舗としては致命的とも言えるイメージダウンだ。

8日にくら寿司を運営する「くらコーポーレーション」は動画投稿に関わったアルバイト店員2人に対して法的措置を取る準備を始めたとのニュースリリースを発表した。

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