たとえば、寄稿する編集者たちの間で意見が合わなかった際の調停の方法は、何段階にもわたって設定され、民主的な方法で相互了解が得られる可能性を重視している。また、運営方法はコミュニティが積極的に参加して決定する。
ウィキペディアのテクノロジーやコンテンツもオープンにして再利用を可能にし、より幅広く開かれるような基盤を築いている。コミュニティの人々は「性善である」という信頼をウェールズは持っているという。そんな信頼が、ウィキペディアという前代未聞のプロジェクトを成り立たせているのだろう。
創業者自ら、ルールを破るものの……
とは言え、ウェールズに対する批判がないわけではない。彼は認めないが、もうひとり共同創設者とされるべき人物がいるというのは、よく知られた話だ。その人物が、最初にウィキの仕組みを百科事典に使えるとウェールズに教え、ウィキペディアという命名をしたのだった。
また、自分に関する項目に自ら手を加えてはならないというのがウィキペディアのルールだが、ウェールズはウィキペディア創設に関する記述を自分で書き直したとされている。だが、面白いのは、そんな書き直しの記録や、書き直したという記述までが、今やウィキペディアの「ジミー・ウェールズ」の項目には含まれている点である。知識を得る際の透明性がどれほど重要なのか。それをウィキペディアは体現している。
「地球の誰もが、全人類の知識を集めた宝庫へアクセスできる。それがウィキペディアだ」(ウェールズ)。
もしNPOに託されなければ、今やウィキペディアの価値は50億ドルに上ると言われる。壮大な人類の実験を皆のものとして世界に手渡したウェールズは、それだけでも現代的リーダーと言えるのだ。
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