ところが、誰でもが寄稿でき、それをまた誰でもが編集できるというプロセス、そしてそれがオープンな状態で公開されるという仕組みが導入されたウィキペディア は、話題と人気を呼び、今や8万人を超えるボランティアがコミュニティを作るほどに拡大を遂げた。
何よりも、多くの人手のかかった知識の集積に一瞬にしてアクセスできるのは、本当にありがたい。ウィキペディアが、インターネットのアクセスランキングでほぼつねに10位以内を保持するほどの人気サイトであることも、十分にうなずけることなのだ。
「完全に信頼してはいけない」
ただし、ウェールズはウィキペディアを完全に信頼してはいけないと、こんなふうに言っている。「ウィキペディアだけを情報源として使うのは、お勧めできない。いや、もっと言えば、何であっても、それひとつだけを情報源にするのはよくない」。
ウィキペディアは知識への探索をスタートするのにいい場所で、どう課題にアプローチすればいいのかを知るためのヒントが、そこにはたくさんある。しかし、普通の人々が寄稿しているのだから、間違いもあれば、意見の違いから公平に記述されていないこともありうるということだ。ほかの多くの資料も参考にしなければならない。その意味では、ウィキペディア は現代のインターネットとのつき合い方の基本、そのものを教えてくれる存在と言ってもいいだろう。
ウェールズは、1966年にアラバマ州に生まれた。父は食品店のマネジャー、母は教師だった。小さい頃から読書が好きで、高校も16歳で卒業してしまった。大学院で金融学の博士号に進んだが、博士号を取る前に金融会社に就職を決めた。
ウィキペディアは当初、ボーミスの資金で運営されていたが、現在はウィキメディア財団というNPOに移り、ほかの財団の支援や個人の寄付金で賄われている。インターネット・サイトと言えば、通常は広告が主な収入源なのだが、ウィキペディアのボランティア編集者たちはそれを拒んで、何ものにも影響を受けない中立性を守ろうとしてきた。政府や企業に左右されない、自由な存在。ウィキペディアはある種のユートピアでもあるのだ。
ウィキ独特の、運営方針
現在、ウェールズは日常的な運営からは離れ、さまざまな場所でインターネット上の言論の自由を語るなど、大きな意味でウィキペディアを支えるシンボルとなっている。しかし、これまでウィキペディア構築のために盛り込んできた仕組みは、ウェールズの力によるところが大きい。
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