内閣府は1月30日、毎年恒例の「中長期の経済財政に関する試算」(中長期試算)を公表した。
中長期試算は年に2回更新することになっているが、今回は2つの意味で重要である。1つは、2019年度政府予算案の閣議決定を受けて、今後の財政収支の見通しを確認すること。もう1つは、今年予定されている5年に1度の公的年金の財政検証で中長期試算がどう使われるかである。
異例の閣議決定やり直し
まず、今後の財政収支の見通しについて、2019年度政府予算案は、毎月勤労統計の不正の影響を受けて1月18日に閣議決定をやり直すという極めて異例の展開となった。一般会計の歳出総額は101兆4571億円と、当初予算としては過去最高額となった。「来年度予算案の『101兆円』はバラマキ予算か」で言及したとおり、消費増税対策や防衛費、公共事業費などの歳出増で歳出が膨張したことから、財政健全化目標の達成は遠のいたような印象を与えた。
毎年1~2月頃に公表される中長期試算の更新版は、次年度予算案の内容を踏まえて改訂される。次年度予算に盛り込まれた歳出改革は反映するが、翌々年度以降の歳出見通しには追加の歳出改革は織り込まないという試算の前提が踏襲されている。
したがって、2019年度予算案に盛り込まれた歳出改革が織り込まれていない2018年7月公表の試算と、今回の中長期試算(2019年1月試算)を比べれば、2019年度予算案に盛り込まれた歳出改革が財政収支の改善にどう影響したかを見極めることができる。
中長期試算の1つの重要な焦点となるのが、2025年度に国と地方を合わせた基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)がどうなるかという点だ。安倍内閣は、2025年度の国と地方を合わせたPBの黒字化を財政健全化目標として閣議決定している。PBは、税収等から政策的経費(基礎的財政収支対象経費)を差し引いた収支である。
2018年7月試算では、より高い経済成長率のシナリオである成長実現ケースで、2025年度のPBは2.4兆円の赤字だった。黒字化目標を達成するにはさらなる政策努力が求められるという試算結果だ。2019年1月試算の成長実現ケースで、2025年のPBは1.1兆円の赤字となった。2018年7月試算から収支が1.3兆円改善する結果だが、収支がなぜこれだけ改善したのだろうか。
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