基礎的財政収支の黒字化、1年前倒しの謎 5年に1度の「年金財政検証」にも影響する

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2025年度のPBは、4つ目の残りの要因を含めると赤字が1.3兆円減る試算結果となって、今回の中長期試算では1.1兆円の赤字となった。今回の試算結果は、歳出抑制効果が主たる要因となって、2025年度のPBが改善する見通しになったと考えられる。これらが影響して、PB黒字化の年次が、2018年7月試算で2027年度だったのが、2019年1月試算では2026年と1年前倒しされる結果につながった。

2018年7月試算と2019年1月試算の歳出面での主たる差異は、2019年度予算案に盛り込まれた歳出改革の効果である。改革努力を毎年度積み重ねてゆくことで、2025年度の黒字化を実現していく必要がある。

努力すれば実現できる金額だが、道のりは険しい。2021年度以降、臨時的な歳出増を行わないことが前提となっているが、2020年の東京オリンピックに財政出動を求める政治的圧力が高まらないとも限らない。さらに、成長実現ケースでは、2020年代前半の名目成長率を3.4%程度と見込んでいるが、その成長率が実現しなければ、税収増は捕らぬ狸の皮算用となる。

財政再建は早期の実行が効果的

今回の中長期試算から得られる1つの示唆は、歳出改革を早期に実施すれば、5年ほど経つと兆円単位の収支改善効果が出るということだ。経済成長を促すことは重要だが、財政再建には早期に歳出改革を実行することが効果的である。

そして、今回の中長期試算のもう1つの見どころは、成長実現ケースとは別に用意されたベースラインケースの試算内容である。それは、今年予定されている年金の財政検証を左右する。

5年に1度行われる年金の財政検証では、今後の経済前提の置き方が問われる。楽観的過ぎる経済前提を置けば、年金財政は一見安泰に見えるが、絵に描いた餅になってしまう。保守的な経済前提でも、年金給付がどうなるかを正直に国民に示す必要がある。

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