従業員に「経営者目線を持て」という謎の要求

会社員に必要なのは、「従業員目線」です。

給料は安いほどいいし残業代も払われないほうがいい?

では試しに、実際に「経営者目線」に立って、いくつか物事を考えてみましょう。

仮に、あなたが働きに見合わないぐらい安い給料しか会社からもらっていなかったとします。これは社員の立場から考えれば、「ふざけるな」という話になりますが、経営者の立場では、社員に払う給料の額は少なければ少ないほどいいということになります。

そこで、「経営者目線」で考えると、薄給でも我慢して働くべきという結論になります。間違っても、給料を上げろなどと言ってはいけません。

次に、残業代も会社から払われず、連日サービス残業を強いられているとします。これも社員の立場から考えれば、直ちに労基署に駆け込むなり弁護士に相談するなりして、残業代を取り返すという話になると思うのですが、経営者の立場では残業代はなるべく払いたくないということになります。

そこで、「経営者目線」で考えると、我慢してサービス残業をするべきという結論になります。

ほかにも、有給休暇だって取得しないほうが会社としたらうれしいでしょうし、休日出勤だってガンガンしてほしいということになるでしょう。

このように、「経営者目線」を強調しすぎると、労働者にとって利益になることは、ことごとく否定されてしまいます。

ある部分において、経営者の利益と従業員の利益は、明確に対立しています。それなのに、従業員に対して「経営者目線」を持てと言うことは、利益を放棄しろと言っているのと同じことです。

そうやって過度に「経営者目線」を持った結果、待っているのは、「社畜」として会社の都合のいいように働かされてしまう未来です。

「経営者目線」で働いても、給料は「従業員」

忘れてはならないのは、どんなに「経営者目線」を持って働いたところで、しょせん雇われは雇われにすぎないということです。

経営者顔負けの仕事をして、会社に莫大な利益をもたらしたとしても、もらえる給料はあくまで「従業員」としてのものです。少しぐらいは給料がアップしたり、昇進したりすることはあるかもしれませんが、それでも経営者が得るのと同じぐらい莫大なおカネを手にすることはできません。

これは、ものすごくアホらしいことではないでしょうか。こんなまともな見返りもない状況で、「経営者目線」を持って働いても、自分が得することはありません。

また、従業員が「経営者目線」を持って仕事をしなければならないとしたら、本当の経営者はいったい何の仕事をするのでしょうか。

会社の立場で物事を考え、意思決定をするのは、経営者の仕事のはずです。それを雇われにすぎない従業員に求めるというのは、ある意味で経営者の「甘え」とも言えるのではないでしょうか。

次ページ「経営者目線」の真の意味
キャリア・教育の人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 最新の週刊東洋経済
  • 新型コロナ、長期戦の混沌
  • 「お金で損しない」森永康平のマネーリテラシー講座
  • 世相をリアルに映し出す 流転タクシー
トレンドライブラリーAD
人気の動画
ANAとJAL、国内線で競り合う復活レースの熾烈
ANAとJAL、国内線で競り合う復活レースの熾烈
富裕層、世代でまったく異なる「お金の使い方」
富裕層、世代でまったく異なる「お金の使い方」
サイゼリヤが「深夜営業廃止」を決断した裏側
サイゼリヤが「深夜営業廃止」を決断した裏側
話題の「30分で絵を描く」秘訣、驚くほど簡単4手順
話題の「30分で絵を描く」秘訣、驚くほど簡単4手順
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
メタバース革命が始まる<br>全解明 暗号資産&NFT

不正流出事件から4年。復活不可能に見えたビットコイン相場は米国主導で活況を取り戻しました。暗号資産を使ったNFTの購入、そしてNFT取引が広がるメタバースにもビジネスの機会が広がっています。日本は暗号資産とどう向き合うのでしょうか。

東洋経済education×ICT