小島慶子「苦しいあなたはここにいていい」 発達障害を告白した彼女が語る社会の難しさ

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――ADHDの特性としてよく言われがちな、マルチタスクが苦手ということでしょうか?

小島:そうですね。予定を忘れてしまったり、記憶が上書きされたり書き換えられてしまったり。「今日は10時集合だ」とわかっていたはずなのに、シャワーを浴びて支度をしているうちに「今日は10時半集合」と脳内で記憶がすり替わっていて、気づいたときにあれっ? 10時だったっけ? となってしまう、といった困りごとはよく起こりますね。

「ニューロ・ダイバーシティ」の概念が広まってほしい

小島:以前、自分のエッセイでも書いたのですが、発達障害という名称ではなく「ニューロ・ダイバーシティ」という概念が広まれば、もっと多様性として世に受け入れらえていくのではないかと思っています。これは、主にアメリカで提唱されている概念で、定型発達、不定型発達の2つに分けるのではなく、「この人はこれが得意でこんなことが苦手な脳」「この人はこういう特徴がある脳」という、脳の多様性を認める考え方です。

「『ニューロ・ダイバーシティ』という概念が広まれば、もっと多様性として世に受け入れらえていくのではないかと思っています」と小島慶子さん(撮影:今井康一)

特徴の強さにもよりますが、それぞれの能力が発揮できるような環境さえ整えば、その人たちの能力が活かされるでしょうし、少なくとも生きづらさは軽減します。

――シリコンバレーでスタートアップのIT企業などは、発達障害の方を多く採用すると以前、元日本マイクロソフト社代表の成毛眞さんにうかがいましたが、それがまさにニューロ・ダイバーシティなのですね。

小島さんは過去に摂食障害、現在は不安障害を抱えていらっしゃるとのことですが、これは発達障害の二次障害ということですか?

小島:それが、いろいろ組み合わさって発達障害だけが原因じゃないと主治医に言われています。1つの側面だけで見ず、生育歴や生まれ持ったパーソナリティーなど、複雑な問題が絡み合っているとのことです。私の育った家庭は人の容姿に関してかなり敏感で、子どもの頃から見た目にコンプレックスがありました。

産毛が多いとか痩せすぎだとか、多感な時期にいろいろ家族に言われることが多かったんです。加えて母の過干渉もあり、15歳の頃、摂食障害の傾向が出始めました。

でも、修学旅行の集合写真などを何枚も見ていると「あれっ? 私って流行の顔ではないけど、客観的に見ると美人と言われるタイプじゃないの?」と気づいたんです。

そこから、「公認の美人」と言われるアナウンサーになれば見た目のコンプレックスから解放されるかと思い、試験を受けてなんとか1000人に1人と言われるアナウンサーの職に就けました。

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