FRBの政策判断への政治からのけん制は、本来であれば中央銀行の独立性を阻害する観点では違反行為である。これを重視すれば、「違反行為」を続けるトランプ政権へのしっぺ返しが想定され、昨年末の株価急落によるFRBの対応は、将来のアメリカ経済やインフレをより不安定化させるなど金融市場にとって弊害になるという解釈になる。つまり、今後の株式市場などの悪材料になりえる。
一方で、「トランプ政権の対応は違反行為」と言い切るのは、中央銀行の独立性という見方に立てばこそだ。
中銀の独立性は、1970年代までに問題となったインフレ加速を防ぐ制度設計として整ってきた。政治圧力によって行き過ぎたインフレを抑制するために中銀の独立性が備わったことが、近年の先進国のインフレ率低下が続いてきた一つの要因だったと言える。
トランプ政権の「FRBへの牽制」は妥当かもしれない
しかし、デフレと低成長が約20年続いた日本の経緯を踏まえると、中銀の独立性の強さが、デフレという別の問題をもたらしたことも、歴史の教訓なのではないか。
2013年に安倍政権が実現した日本銀行執行部の入れ替えを契機に、日銀はFRBなどと同様に、プラスインフレを目指すノーマルな中央銀行となった。その後、まだ道半ばではあるが、日本経済はデフレから脱却を果たしつつあり、また労働市場の回復という大きな成果が得られた、というのが筆者の見方である。
アメリカでは現在2%前後のインフレ率安定を達成しており、日本経済とは位置づけが異なる。ただ、リーマンショックの後遺症から立ち上がる局面にあり、仮に再びデフレに陥るリスクが残っているのであれば、違反行為とも言えるトランプ政権による慎重な政策対応を求めるFRBへの牽制は、経済政策として妥当である可能性もある。
2018年のトランプ大統領のFRBの政策判断へのけん制、その後の株式市場の大幅な変動、そうした経緯を経たFRBの政策変更がどのような結末となるかは、今後のアメリカ経済動向次第で、将来にならないと評価はできない。
筆者自身は、経緯がどうであれ、2019年にかけてFRBが利上げを当面見送る方向に転換したことは、長期的にみてアメリカ経済にとってポジティブな側面が大きいと考えている。そして、FRBの政策転換が、2018年に下落したアメリカ株式市場の反転をもたらすと見込んでいる。
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