2018年12月の急落に続き、2019年のアメリカの株式市場は波乱の幕開けとなった。3日にはアップル株価の急落などをきっかけに大幅下落したが、昨年末からの余震が続いた格好である。なお、同12月はアメリカの株式市場の下落率が10%超となったがこれは1930年台以降で初めてであり、歴史的にみて異例の急落と位置付けられる。
FRBは難しい対応を迫られた
昨年12月のクリスマス休暇にかけてのアメリカ株式市場の急落は、いくつかの市場心理を悪化させる要因が重なったために起きた。中国の景気指標の下振れで市場心理が悪化した直後のタイミングで、アメリカでFOMC(米連邦公開市場委員会)が行われ、この時のジェローム・パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長のメッセージで、FRBの政策への不信感が高まったことが、株価急落をもたらした。
周知のようにドナルド・トランプ大統領に加えて、複数の政府高官がFRBの利上げをけん制する異例の発言を続けていた。パウエル議長はFRBの手段の独立性を重視し、政治圧力に屈する姿勢をみせたくなかった。そのことが、同12月19日FOMC後の記者会見での金融市場の期待を突き放したような発言につながり「株価下落や海外経済の減速に柔軟に対応しない」との金融市場の疑念を高めるメッセージとなった。FRBの政策ミス(利上げの行き過ぎ)によってアメリカ経済が早期に景気後退に至るとの懸念が浮上し、FOMC以降、連日でアメリカ株式市場が急落することになった。
パウエル議長のコミュニケーションの不出来が、市場心理を悪化させたということになるが、先に述べたように、トランプ政権がFRBの政策判断の領域に踏み込み、露骨にけん制する中で、FRBが市場とコミュニケーションをとるという、難易度の高い対応を迫られた。パウエル議長の対応には配慮が十分ではなかったことに加えて、トランプ政権の「口撃」によってFRBの対応が難しくなり、政府とFRBとの不協和音が示されたことが、アメリカ株式市場の大幅下落を招いた一因とも言えるだろう。
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