株式市場では「FRBの金融政策の判断ミスで景気後退が訪れる」との疑念が強まり、パウエル議長の発言をきっかけに株価下落が一段と進んだ。そして、トランプ政権がFRB議長の解任に動くとの思惑が大きく浮上したとみられる。
しかし、FRB議長解任には一定のハードルがあり、政治問題化することに加えて、金融政策の体制が大きく変わることへの不確実性が、さらなる株価下落をもたらした。実際には、トランプ政権が「パウエル議長解任」というショック療法には早期には至らなかったことが、昨年末に株価が下げ止まったきっかけになった可能性がある。
その後は、パウエル議長の発言により高まったFRBの政策への市場の懸念を払拭するために、複数のFRB高官から、当面の利上げを見送るメッセージが続いた。そして、1月4日、著名な学会でパウエル議長も、市場の懸念を理解している点、利上げ見送りを続けた2016年を引き合いに出して柔軟な政策判断を行う点、などに言及した。これは、アメリカ経済の大幅失速が懸念され、株式市場の急落が続く中では利上げを見送るという、事実上の政策スタンスの大幅な変化を示しているとみられる。
振り返れば、トランプ大統領が警戒していた、FRBによる累積的な利上げ政策の弊害が現れることで、アメリカ株市式場が大きく下落した。トランプ大統領などによるFRBへのけん制は、通常であれば「行き過ぎ」の領域に入っていたが、結果的にトランプ大統領の懸念が正しかったことが、示されたと言える。
利上げは少なくとも年央まで見送りか
結局、FRB執行部が利上げ継続リスクの大きさを強く認識し、トランプ大統領の異例の警告に従う格好で、政策姿勢を変えることになるのだろう。具体的に言えば、当面の利上げは、2016年と同様、少なくとも年央までは見送られることになるだろう。
今後のFRBの対応を踏まえて、トランプ政権のFRBへの批判もトーンダウンしていくと予想される。FRBとトランプ大統領の不協和音が収束するとの期待もあってか、すでに1月7日時点で、アメリカ株式市場は、昨年12月19日のパウエル議長発言後の下落分を取り戻す格好で反発した。
昨年末から年始にかけての、FRBの政策への思惑がもたらしたアメリカの金融市場の急変動、その後のFRBの政策転換への評価は、さまざまだろう。
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