「密告奨励」に戦々恐々とする、中国社会 一段と左傾化する習近平政権の行きつく先は?

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このような見せしめを繰り返す手法は、文化大革命後の四人組裁判と同じであり、共産党の昔からの伝統的なやり方である。日本人の感覚からすると「またやってらー」という感じで、露骨すぎる感も否めない。

しかも、中国人はこうした見せしめ裁判には慣れている。それゆえ「いずれ、薄熙来氏は蘇ってくるだろう」と腹の中で感じている人も少なくない。最高指導者だった鄧小平氏(1904~1997)が3度失脚して3回復権したように、である。本来なら腐敗を防止する法律をきちんと整備する抜本策が必要なのだが、こう思うのは日本人だけで、中国では日常茶飯事だから何ということもないのだろう。

不動産バブル崩壊を防ぐ軟着陸作戦の側面も

一方、 習近平政権が一段と左傾化するしかないという話の背景には、あまりにも急速に発展した経済面の見直し気運もあるのではないか。
中国の経済成長は近年、不動産・国有の土地の売買で支えられている部分がますます多くなった。地方政府はすべてではないものの、国有土地を売らない限り、運営ができなくなりつつある。地方政府が野放図に作ってきた負債は年々重くなっている。

たとえば、地方政府が国有地を担保に作った立派な空港などは、地方政府の保証で中央銀行から大量に融資を受けている。開発主体の地方国営企業はGDP競争を優先してきたから、無計画なプロジェクトが多い。基本的に最初から返済不可の融資も少なくない。国家資産に対して責任をとらず、官僚たちが個人の短期的な思惑と経済運営で安易に許認可を乱発してきた結果である。今年「シャドーバンキング」が話題になったが、いずれは問題が起きるのが確実だ。不動産バブルが崩壊すると、共産党政権の崩壊につながる可能性さえある。なんとか軟着陸させるシナリオが計画されているが、状況はそれほど簡単ではないようだ。

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