「密告奨励」に戦々恐々とする、中国社会 一段と左傾化する習近平政権の行きつく先は?

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確かに、こうした密告や告発で、官僚や役人の賄賂の実態が暴かれ、一般国民は溜飲を下げている。ただし、中には単に「気に入らない連中を陥れるための密告」も激増しているのだ。密告行為は一次的にはガス抜きの効用もあるが、これが続くと世相が暗くなる。元々、中国人は他人を信用しない。だが、今の中国はみんなが疑心暗鬼になっているから、深刻な社会問題になっている。

汚職発覚の3パターン

ここで汚職事件の発覚パターンを3つに類型化してみよう。まず第一は「下っ端が逮捕され、芋づる式に余罪がみつかるパターン」だ。いったん狙われたら(誰でもやってるから)まず逃げられない。普段から嫉妬されないよう、気をつけるしかない。

第二のパターンとしては、賄賂をもらった役人が、何もせず、贈賄側から仕返しされるパターンだ。「やらずぶったくりは許せない」ということだ。

第三のパターンはブラックメールである。ネット上に写真が投稿されるのは、典型的なケースだ。大抵は交通事故のようなものだが、やはり火のないところに煙はたたないのだ。

失脚した共産党の元幹部・薄熙来氏は、権力闘争のなかでスケープゴートとして血祭りにあげられた感がある。だが、共産党内の権力闘争もさることながら、いま習近平政権がなぜここまで事実上密告を奨励するかといえば、これ以上の腐敗は共産党の壊滅につながると危機感を感じているからだろう。実際に習主席は、何度か明言もしている。このような見せしめのことを「殺雞給猴子看」と言う。要するに「鶏を殺して猿に見せる」という意味だ。

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