アートが伝える「戦争・テロ・自然災害」の世界

現代社会の大惨事と美術はどう向き合うのか

スウーン:それは新鮮な見方ですね。アーティストのひとりとして嬉しい言葉です。

後半は「美術のちから」がテーマ

スウーン:後半は、破壊からの創造を行う「美術のちから」がテーマ。この作品の加藤さんは、津田さんが芸術監督を務める「あいちトリエンナーレ2019」にも参加予定だとか。社会における「美術のちから」をどう考えますか?

加藤 翼《The Lighthouses – 11.3 PROJECT》2011年 プロジェクトの記録写真 Kato Tsubasa The Lighthouses – 11.3 PROJECT 2011 Documentation photograph of the project Photo: Miyajima Kei Courtesy: MUJIN-To Production, Tokyo 加藤氏は東日本大震災後に福島県いわき市の復旧支援に関わるなかで、ある地域のシンボルだった灯台を模した構造物を作り、立場を超えた総勢500名の人々と一緒に「引き興し」を行った(写真:HILLS LIFE DAILY)

津田:先ほど感情と客観性の話も出ましたが、「情」という漢字には、情報、感情に加え、他者への想像力や連帯につながる「なさけ」の意味がある。世界がネットに渦巻く情報で感情的になっている今、この3つめの力は重要で、これが次回あいちの主題。だからこの加藤さんのような表現にも注目しています。

スウーン《メデイア》2007年 ミクスト・メディア・インスタレーション Swoon Medea 2017 Mixed media installation 性的暴力や薬物乱用の問題をはらんだ、作家自身の家族史と向き合った作品。住居の各所に描かれた異形の女性は母や祖母を表し、電話機からは虚実が混交した会話が聴こえる(写真:HILLS LIFE DAILY)

スウーン:これが私の作品。少しシリアスな話になるけど、私の家の世代間にわたる心の傷をめぐるものです。家の各所に描いたのは、冷たく支配的でもあった祖母や、薬物依存のあった母です。実は二人とも、過去に性的暴力に苦しんでいた。私にも辛い記憶は多く、でも母の死を機に全てに向き合おうと思いました。

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