アートが伝える「戦争・テロ・自然災害」の世界 現代社会の大惨事と美術はどう向き合うのか
スウーン:美しい水彩が実は核爆発を描いたものというカーンの絵や、人々の潜在意識を描くようなヘルムット・スタラーツの不穏な絵画にも引きつけられます。私は潜在意識というのが人災の原因にも、それを軽減する力にもなると思う。
作品の感じ方は多様
津田:見る人の過去の体験によって作品の感じ方は多様でしょうね。トーマス・デマンドが紙で作った《制御室》で僕が思い出すのは、福島やチェルノブイリの原発事故現場を訪ねて感じた、かつて未来の象徴だったものの儚さです。
スウーン:なるほど。こうして美術を通じて話し合うことでも、発見がありますね。
スウーン:私は、表現に用いるメディア(媒体)と、メッセージとが密につながる作品が好きです。津田さんがジャーナリストとして美術に共感する部分は?
津田:ジャーナリストが数万字の言葉で複雑な現実を伝えようとするとき、優れた美術はその本質を瞬間圧縮して届けてくれます。だから、報道のような速報性や支援活動のような即効性はなくても、違う意味で「美術は速い」。もちろん各々に役割がありますが、僕が美術に惹かれるのはそうした力です。