芸術から遠い分野だって、「創造力」が必要だ サミュエルソンは経済学を生まれ変わらせた

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クリエイティブではないお堅い分野ほど、創造性を注ぎ込むべきだ(写真:SonneOn / PIXTA)
人生は一度きりしかない。「お仕着せではないクリエイティブな生き方をしたい!」という願望を持っているビジネスパーソンは多いのではないだろうか。そんな人々を勇気づけて背中を押してくれるのが、先人たちの偉業をまとめた書籍。『「クリエイティブ」の処方箋』(ロッド・ジャドキンス著、島内哲朗訳、フィルムアート社)には、クリエイティブに生きるための発想が、86本の短めの読み物として紹介されている。
東洋経済オンラインでは、86のアイデアのうちのいくつかを紹介していく。第8回は「大量創造兵器になる」。

 

それはポール・サミュエルソンという経済学者のお陰なのだということを、ご存知だろうか。2008年に起きた景気の急転直下は、実に大恐慌以来という急激なものだった。工業経済の発展した国々はこぞってサミュエルソンの教えに従い、社会資本の消費を拡大し、減税、輸入拡大、ゼロ金利といった政策転換を図った。いずれも直感的には誤りとも思える大胆な策だ。翻って1930年代の大恐慌のときはどうだったのだろう。均衡財政を目論んで消費を抑え、輸入障壁を設け、結果として危機的状況を大災害にしてしまった。

サミュエルソンが新しい経済学の幕を開けた

1960年にジョン・F・ケネディが大統領になったとき、ケネディはサミュエルソンを経済顧問に指名した。しかしケネディは、サミュエルソンの助言に耳を疑った。景気は悪化しつつあったが、サミュエルソンの進言は減税だった。ケネディ陣営の選挙公約は財政的均衡の達成だったので、この助言は公約に矛盾するように見えた。何より直感的に間違っているように思われた。ケネディ暗殺後に大統領となったリンドン・ジョンソンは、サミュエルソンのプランを実行し、景気は回復した。サミュエルソンは、その後も経済的助言を乞われ続けた。

耳を疑うと言えば、サミュエルソンの経済理論は、実は薬学や物理学に触発されたものだった。サミュエルソンは、例えばメンデルの遺伝的動態の理論のような、経済学に転用できそうな考え方を求めて何十年もの間、医学ジャーナルを読んでいた。熱力学の原理に基づいた平衡という考え方も、サミュエルソンによって経済学に応用された。誰もが理論に頼って経済学を捉えていた時代に、クリエイティブな思考によって新しい経済学の幕を開けたサミュエルソンの存在自体が、事件だった。

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