出向は、組織から脱落した社員の受け皿
出向は、このピラミッド構造から脱落した社員のポストを確保するという重要な役割を持っていて、脱落者の受け皿になっている。前出の元行員によれば、彼が支店長在任中の重要な仕事のひとつは「先輩支店長向けの出向先探し」だったという。
また、ドラマ「半沢直樹」では、左遷や降格の処遇としての出向が強調されていた。しかし彼によると、必ずしもそうではなく、栄転型の出向もあるし、評価が落ちた人材ばかりを取引先に送り込むことなんてできない。逆に、銀行内に左遷や降格の配置先はいくらでもあるという。
ただ出向は、やる気や意欲はあっても、不本意に銀行を離れざるをえないので、島流しのように描かれていたのだろう。
あるメガバンクの中堅行員は、バブルの大量採用世代がまもなく50代に突入するため、その頃には出向できる社員の割合も減少するだろうと語っている。相次いで行われた合併によるポストの減少も考慮に入れると、ますます働かないオジサンを生み出す基盤が強固になっていると言えそうだ。
今回は銀行をひとつの例に、働かないオジサンを生み出す構造について述べてきた。
しかしこの構造は、高度成長時代に羽振りのよかった会社や伝統的な企業では、多かれ少なかれ相似形であろう。むしろ銀行のように多くの出向先を持たないという意味では、もっと深刻な課題になっている会社も少なくないと思われる。
「働かないオジサン」を生む構造は変えられないのか?
ただ、それでもいくつかの疑問が浮かんでくる。
「働かないオジサン」を生み出す理由が、新卒一括採用やピラミッド型組織であるとすれば、それらを変更することはできないのか。また、同じように新卒一括採用の企業であっても、「働かないオジサン」がいない会社はどのように対応しているのか? 次回以降は、これらの点についても検討してみたい。
なお、蛇足になるが、冒頭に紹介した45歳で出向になった銀行員のYさんは、出向をきっかけに、余裕ができた時間を活用して、自分の興味のあることに積極的に取り組んだ。その結果、定年の数年前に退職して、あるNPO法人の事務局長として活躍されている。「今から考えれば、もっと早く出向になればよかった」と明るく笑っている。
たとえ出向になっても、それは会社内の島流しであって、サラリーマン個人には道は必ず存在するのである。
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