お年玉の「無駄遣いはダメ」と言うのはNGだ 正月は親子でお金について考える絶好の機会

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これらのことを学ぶと、子どもたちはお金について武器と防具を手に入れることになると筆者は考えている。武器とは攻めの手段。つまり、資産を増やしていく知識を指すので、それこそ資産運用などの知識である。一方で防具とは資産を守るすべである。資産を守るということはどういうことか。

警察庁が発表した「平成30年上半期における特殊詐欺認知・検挙状況等について」によれば、2017年1年間では特殊詐欺の認知件数は1万8212件に上り、被害総額は394億7000万円にもなっている。この数字はあくまで警察が認知している数字の合計なので、泣き寝入りしている分を合計すれば、被害総額は400億円を超えていてもおかしくない。

実際にあった特殊詐欺の例を見てみると、スマートフォンの利用時に虚偽の内容に誘導されて現金を振り込まされるようなケースも多い。最近は小学生の頃からインターネットやスマートフォンを利用する機会があり、適切な金融教育を受けていないと被害に遭う可能性も高くなるだろう。このような詐欺から身を守るための金融教育を防具と言っている。

足りないのは使い方の教育

これまで見てきたように、日本人はもともと貯金をすることは習慣づいている。そして、近年では金融教育=投資と思いこまれるように、投資についての情報も世の中にはあふれかえっている。

ここから言えることは、子どもにお金の話をするうえでいちばん足りていないのはお金の使い方の部分である。学校教育で金融教育を期待できない以上、家庭での金融教育こそが求められるわけだが、実はお金の使い方については増やし方や貯め方と比べると方法論が教えにくい。しかし、筆者は実に単純な方法で良いのではないかと考えている。

わが家ではとくに子どもたちに趣味を隠すこともなく、目の前で趣味の時間を費やしている。筆者の場合は釣りが趣味なので、実際に釣りに子どもたちを連れていくこともあるし、家で釣り具の手入れをすることもある。

子どもたちは親の楽しそうな姿を見て、うらやましそうな顔をしている。当然ながら大人と子どもでは経済力に差があるため、子どもたちから見れば親が持っている趣味に関する物の量にうらやましさを最も感じるようだ。

自分たちの貯金ではそんなに多くの物を買えないと文句も言ってくるが、仕事でお金をもらい、家族に必要な分を支払い、残ったお金の一部を趣味に費やすと説明すると、自分たちも大人になったら一生懸命仕事をして、好きな物を買うと意気込んでいる。

大事なことは、お金を使うことや、お金の話をすることが卑しいこと、悪いことという印象は持たせないようにすることだ。最も簡単な方法は、日常から家でお金のテーマが出てきたら躊躇することなく話をすることであり、お年玉を渡すタイミングはベストだろう。お年玉を渡すときに金融教育の第一歩を踏み出すことができれば、その1年が家庭での金融教育元年になっていくことだろう。

森永 康平 マネネCEO/経済アナリスト

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もりなが こうへい / Kohei Morinaga

証券会社や運用会社にてアナリスト、エコノミストとしてリサーチ業務に従事した後、複数金融機関にて外国株式事業やラップ運用事業を立ち上げる。業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾、マレーシアなどアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、各法人のCEOおよび取締役を歴任。現在は法律事務所の顧問や、複数のベンチャー企業のCFOも兼任している。日本証券アナリスト協会検定会員。株式会社マネネTwitter

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