「35歳からガムを噛め」と医師が勧める理由 認知症予防と歯周病の意外に深い関係

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現代社会では、食事の際に行う咀嚼だけではかむ回数が不十分なので、食事と食事の間にこまめにガムをかむことで、足りない分の咀嚼回数を補っていきましょう。

ガムのかみ方の目安としては、1日3回。1回につき5分以上はかんでください。唾液による歯の再石灰化効果を高めるために、1粒ずつ、毎食後にかむとよいでしょう。あるいは、就寝前にかむのも効果的です。就寝中は唾液の分泌が減ります。唾液パワーで口腔内細菌が減らせるので、このタイミングでかんでおくと、朝の起床時の口臭を減らすことができます。ただし、ガムをかむことでプラーク(歯垢)を落とすことはできないので、ガムだけに頼らず、歯みがきをしっかりすることが重要です。

ガムをかむときは、口の中でかむ位置を変えて、左右交互にかむようにしましょう。

選ぶべきガムと選んではいけないガム

ガムを選ぶ際は、次の成分が含まれているものがお勧めです。これらのガムにはむし歯予防を助ける働きがあります。

① キシリトール
白樺や樫の木などを原料としてつくられる天然素材の甘味料。むし歯予防にはキシリトール含有率が90%以上の歯科医専用のキシリトールガムが効果的です。
② リカルデント(CPP-ACP
牛乳の蛋白質からつくられています。歯のエナメル質の再石灰化を助けます。
③ ポスカム(POs-Ca/リン酸化オリゴ糖カルシウム)
ジャガイモを原料とするオリゴ糖でつくられています。
④ L.ロイテリ菌
人由来の乳酸菌。むし歯や歯周病の原因菌を減らす効果があるとされています。

一方で、お勧めしないのは、次のようなガムです。

× 糖類を含むもの
糖類ゼロgのものを選びましょう。甘味料としては、キシリトール、ソルビトール、マルチトールなどがお勧めです。
× 酸性物を含むもの
クエン酸や果汁入りなどの、それ自体が酸性のものは避けましょう。酸性度にもよりますが、歯のエナメル質が溶け出す可能性があります。

認知症が進行している方や、ものを飲み込む嚥下機能が低下している方の場合は、ガムをのどに詰まらせてしまう危険性があるのでお勧めができませんが、若いうちからガムをかむことで、将来の認知症の予防が期待できます。

前述したように歯周病の発症率が増えていくのは35歳前後。「まだまだ先の話だから」と油断せず、こまめにガムをかんで認知症リスクから脳をしっかりと守りましょう。

長谷川 嘉哉 脳神経内科、認知症の専門医

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はせがわ よしや / Yoshiya Hasegawa

1966年、名古屋市生まれ。名古屋市立大学医学部卒業。医学博士、日本神経学会専門医、日本内科学会専門医、日本老年医学会専門医。毎月1000人の認知症患者を診察する、日本有数の脳神経内科、認知症の専門医。祖父が認知症であった経験から2000年に、認知症専門外来および在宅医療のためのクリニックを岐阜県土岐市に開業。これまでに、20万人以上の認知症患者を診てきて、いち早く認知症と歯と口腔環境の関連性に気づく。現在、訪問診療の際には、積極的に歯科医・歯科衛生士による口腔ケアを導入している。さらに自らのクリニックにも歯科衛生士を常勤させるなどし、認知症の改善、予防を行い、成果を挙げている。「医科歯科連携」の第一人者として、各界から注目を集めている医師である。

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