上意下達が大嫌いな日本人こそ「民主的」だ

トップダウンを強制しても成功できない理由

柴山:トップが現場に行って実情を聞き、それを経営に反映させていくことがかつての日本企業の活力源だった。それがこの30年ぐらいで消えていった。ソニーがそうだったとすれば、典型ですね。

大学の運営にしても、これまでは典型的なボトムアップで、教授会で誰か一人でも反対したら決められなかった。それを大学改革で上意下達にしようとしている。ところが学長の権限を強めて学長命令で動かすようにしたら、逆に組織がうまく機能しなくなってきました。同じことは日本のあちこちで起こっているんじゃないか。

日本型組織は実は民主主義的

中野:日本でトップダウンスタイルのパフォーマンスがよくないというのは、「日本人は本当は集団主義的ではなくて、上から言われたことを素直に聞けない」ことを意味しているのではないか。逆にアメリカ人は上の命令に黙って従えるのではないか。柴山さんの話を聞くと、そういう説が成り立ちそうな気もします。

中野 剛志(なかの たけし)/評論家。1971年、神奈川県生まれ。元・京都大学工学研究科大学院准教授。専門は政治経済思想。1996年、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、通商産業省(現・経済産業省)に入省。2000年よりエディンバラ大学大学院に留学し、政治思想を専攻。2001年に同大学院より優等修士号、2005年に博士号を取得。2003年、論文‘Theorising Economic Nationalism’ (Nations and Nationalism)でNations and Nationalism Prizeを受賞。主な著書に山本七平賞奨励賞を受賞した『日本思想史新論』(ちくま新書)、『TPP亡国論』『世界を戦争に導くグローバリズム』(ともに集英社新書)、『国力論』(以文社)、『国力とは何か』(講談社現代新書)、『保守とは何だろうか』(NHK出版新書)、『官僚の反逆』(幻冬舎新書)などがある(撮影:今井 康一)

柴山:会議を積み重ねて、あらゆる反対意見を議題に載せて熟議しようとする日本の組織運営は、ある面では極めて民主的ですね。欧米ならそんな手間のかかることはせず、多数決で決めたことには従おうとなる。

中野:「日本のトップは現場の言うままに判を押すだけ」という批判もあります。下が上の言うことを聞かない日本で無理にトップダウンを続けると、上が下に忖度して、最初から「こう言っておけば、みんな納得してくれるだろう」というようなことしか言わなくなるのではないか。

柴山:「トップダウンは責任の所在が明確だからいい」と言われるけれども、実はそうした形で無責任にもなりうるわけです。

佐藤:トップダウンで行くのなら、リーダーは調整役ではダメです。良くも悪くも、独裁者にならねばならない。ただし「リーダーはしばしば、自分が率いている人々によって逆に率いられる」というのは、洋の東西を問わぬ真理だと思います。

柴山:トップダウンの長所は決定が速いということと、やってみてだめならすぐ切り替えられるということでしょう。見切り発車でやってみて「やばいぞ」となったらすぐ方針を変えれば、生き残ることはできる。アングロサクソンはそこがすごく強い。

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