上意下達が大嫌いな日本人こそ「民主的」だ トップダウンを強制しても成功できない理由

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佐藤:施さんの本に、「世間さま」と「お天道さま」の違いをめぐる話が出ていますね。世間さまは身近な他者による評価で、偏ったり、理不尽だったりすることもある。逆にお天道さまは遠いところにある存在で、公正明大に良しあしを判定してくれる。

:お天道さまというのはカント哲学でいう統制的理念のように本来、普通の人間にはわからない視点なんです。これも拙著で詳しく論じていますが、自分や自分を取り巻く状況のすべてをもし知ることができたときに一般的な第三者がとる視点です。事情を完全に把握している「世間さま」の視点といってもいいでしょう。認識はできないけれども、これを置いておかないと自己批判、自己反省ができないという基準ですね。

中野:西洋でいう「神が見ている」と同じで、いい意味での個人主義というか、周囲と意見が違って批判されても「自分は正しい」と信じるとき、「お天道さまが見てくれている」という言い方になるわけですね。

「欧米」の目線を過剰に意識し、自己批判を繰り返してきた

佐藤:改革推進論には、「日本国内=世間さま、グローバルスタンダード=お天道さま」の図式が潜むのではないか。「そのやり方は日本では通用しても、世界では通用しない」というおなじみの主張は、身近な他者の評価を退けて、遠くの抽象的基準による評価を肯定しているわけです。だから改革論者は、批判されようが自分は正しいと信じ込める。

『富国と強兵 地政経済学序説』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

:日本人を納得させるための型というものがあるんでしょうね。戦後の占領政策にしろ新自由主義改革にしろ、受け入れにくい政策を進めようとする人たちはそういう型をうまく使ってきた。

しかし、型は類似していたとしても、「グローバルスタンダード」は実はアングロサクソンの視点といってもいいほど世界全体からみれば偏ったものなので、「お天道さま」の是認が得られるようなものとは程遠いですが。

佐藤:無意識の自己否定願望を、明確に意識してみせることで、従来の価値観を否定したがるのが、わが国の改革論者だと規定できそうですね。「他者の目線を意識して自己批判する」のが日本人の習性ですが、明治このかた、わが国は「欧米」の目線を過剰に意識し、自己批判を繰り返してきたことになりそうです。

久保田 正志 ライター

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くぼた まさし / Masashi Kubota

1960年東京都品川区生まれ。経済系フリーライターとしてプレジデント社・東洋経済新報社・朝日新聞出版社などで取材・執筆活動を行っている。著書に『価格.com 賢者の買い物』(日刊スポーツ出版)。ペンネームで小説、脚本等フィクション作品も手がけている。

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