「保護猫の支援」がビジネス化する深刻理由 猫カフェ、猫付きシェアハウス、雑貨屋…
試みとして2017年12月、本社のある埼玉の保護猫団体からの依頼で、店舗での保護猫譲渡会を開催した。すると客から大きな反響があり、島忠の取り組みを保護猫活動家がつづったSNSには、多くの「いいね!」が寄せられたという。
これを機に島忠では、保護猫の支援につながる取り組みが始められるようになった。首都圏を中心とする約10店舗で、月に1回程度の譲渡会を行う。なお、保護団体から里親に猫を譲渡する場合、猫の手術費や運営にかかったお金2万~3万円程度を支払ってもらうのが一般的だ。とはいえ、ペットショップやブリーダーから入手すれば10万円以上は当たり前にかかるので、はるかに安い。
島忠にとって、猫を無料で譲渡する団体はライバルの関係にあるとも言える。実際、「なぜ競合を支援するのか」という目を向けられたこともある。
保護猫活動とペットショップは共存できる
しかし、「保護猫という選択肢をお客様に伝えることで、動物を家族にする人が増える。このことには意味があります」と山下氏は言う。
というのも、日本でのペットの飼育率は横ばい、減少傾向にある。ペットを飼いたいという人がこのまま減っていけば、ペットにかかわる事業は先細りになってしまう。
また、年配の人には一般的に子猫は販売していない。20年生きる猫もおり、飼い主が病気になったり、先に亡くなってしまった場合、行き場をなくしてしまうことが考慮されている。そうした、年齢を理由に子猫が購入できない客に、保護猫譲渡会を案内して成猫の里親になってもらうこともある。
「保護猫活動の記事などを読んでいると、どうしてもペットショップが悪者になっていることが多いですね。しかしそうではないということを伝えていきたい。保護猫の活動とペットショップは共存できると思います。ボランティアを応援するなど、業者として今できることに力を入れたいと思っています」(山下氏)
業界内でも保護猫支援への理解が進んでいるようだ。島忠では、ペット用品のメーカーの協力を得て、2017年からペット用品の売り上げの一部をネコリパに寄付するキャンペーンを数回にわたり行ってきた。2018年10月からは、それをさらに本格化し、CSRとして行っていく「お買い物でネコダスケ」と称するプロジェクトを開始している。
動物保護や共生社会の実現という、社会性の高いビジネスだけに、保護猫ビジネスはSNSやクラウドファンディングなど、新しいシステムとの親和性が高いようだ。しかしこれだけでは、社会全体を変えていくには難しい。島忠のようなペット用品の事業者や、不動産の企業といった既存の企業と手を結ぶことは重要だ。このことは、法律の問題に関しても言える。
今回は触れなかったが、猫の保護において、関連する法律や規制が障壁になることも多い。山下氏は、動物保護先進国の法律や状況についても学びたいと考えているそうだ。企業が率先してこれらを行っていくことは、社会が変わる大きな助けとなるだろう。
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