「保護猫の支援」がビジネス化する深刻理由 猫カフェ、猫付きシェアハウス、雑貨屋…

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ネコリパの大きな転機となったのが2016年、大阪心斎橋店のオープン。“ネコビル”と呼ばれ、ビルの1階から5階までが丸ごと猫のための施設だ。実はこの大阪店は2代目。その前の大阪1号店は、“多頭飼育崩壊”現場の部屋を活用するための策としてオープンしたものだった。

多頭飼育崩壊とは、飼い主が自分で管理できないほど多数の動物を集め、繁殖を放置するなどして、飼育が不可能となること。保護猫のボランティアでは、この多頭飼育崩壊により多数の猫を引き取るケースも多いという。ただ、上記大阪の例は、保護活動をしていた方が亡くなったことが発端であり、一般的な多頭飼育崩壊とは事情が異なるという。

幸い、多頭飼育崩壊の現場を猫カフェにするアイデアは成功し、2年後には新店舗の検討をするほどになった。

ただ、ビルを丸ごと借りるとなると、これまでにないほど大きな費用が必要である。このとき利用したのがクラウドファウンディング。結果、当初の目標額よりさらに上の目標(ストレッチゴール)である1800万円超の金額が集まったという。

ネコリパの新ブランドNECOREPAのフラッグシップ店を蔵前にオープンしたのも、別に立ち上げたクラウドファンディングによるもの。そのストレッチゴール562万円の達成により、11月1日には、岐阜に飲食ブランド「さび食堂」を開始した。「さび」は猫の毛柄の一種で、黒と茶がまだらになった模様のこと。同店ではねこまんまや、岐阜名物の土手煮、鶏ちゃんなどが味わえる。

「クラウドファンディングは購入型を利用することも多いです。寄付という感覚でなくても、もらえるグッズがかわいいからとお金を投資してくれる人もいます」(河瀬氏)

今後もクラウドファンディングを利用した出版社の立ち上げを予定しているという。

日本の「保護猫カフェ」の元祖

日本での保護猫カフェの元祖とも言えるのが、NPO法人の東京キャットガーディアン(以下、TCG)だ。

代表の山本葉子氏は2002年より、自宅で約30匹の猫の保護を開始。2008年には常設の猫の譲渡会場として、猫カフェを兼ねた開放型のシェルターを立ち上げた。

TCGの大塚スカイシェルター。天井も高く開放感ある空間で、猫たちが安心してくつろいでいる。こうしたシェルターに保護されている猫の場合、過去に不幸な体験をした猫も少なくない(写真:東京キャットガーディアン)

ビルの5階に設けられた「大塚スカイシェルター」は、天井が高く開放感のある空間。大きな窓から入る外光のなか、たくさんの猫たちが思い思いにくつろいでいる。時期によって異なるが、この団体施設には合わせて380~450匹の猫が暮らしている。カフェスペースに出ているのは大人の猫と白血病ウイルスチェックが終わった子猫たちだ。生後2~4カ月までくらいの子猫のスペースは別に設けられている。

山本氏は「保護猫活動をビジネスの手法で行っている」とはっきり言い切る。

「ビジネスでないと続かないんです。ビジネスとして運営できれば、将来、私がいなくなったときも、保護猫の活動を継続させることができます」(山本氏)

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