「保護猫の支援」がビジネス化する深刻理由

猫カフェ、猫付きシェアハウス、雑貨屋…

猫ブームということもあり、付加価値アップのために猫付き不動産に興味を寄せる物件オーナーは多い。月に一度、オーナーのための勉強会を開催しているが、多いときは20人ほどの受講者が訪れる。そのなかの1割程度は不動産関係者だという。猫付きの不動産がビジネスとして注目されているということだ。

「ただし猫に特化した住宅を経営したい、というオーナーさんは多くいらっしゃるものの、かなりの数、条件が合わなくて断らざるをえない状況です。というのも、ビジネスとして成り立たせるためには、立地のよさなど、まず物件として優良でなくてはならないためです」(山本氏)

特にシェアハウスは他者と暮らすのが前提であるため、選択肢が狭まってくる。交通の便がよいことは第一条件となるそうだ。

このように、TCGでは非常に大きな時間、手間、お金をかけ、猫と人の共生社会を目指している。究極の目標は「野良猫がいない社会」だそうだ。

「今、野良犬を見かけることは都市部ではほとんどなくなりました。猫も同様になるのが理想です。それに成功しかけているのが『猫の多い街』で有名な谷中です。看板猫がいる店などは多いですが、外を歩いている猫は意外にいない。避妊去勢手術とその後の管理が徹底されているからです」(山本氏)

猫の殺処分数が10年前の20万1000匹から3万5000匹へと減少し、保護猫についての理解が少しずつ進んでいる現在の状況についても、「ボランティアさんが持ち出しで活動しているおかげ」と前置きしつつ、「まだまだこれから」と厳しい見方をしている。10数年、さまざまな手段をもってして、数千匹という数の猫の居場所をつくってきた山本氏だからこそ、殺処分ゼロという目標の難しさが具体的に感じられるのであろう。

島忠はなぜ「競合」を支援するのか

最後に、これら猫を救う団体たちをつなぐ存在として、ペットに関する事業者の取り組みを紹介する。島忠では近年、一部の店舗で保護猫の譲渡会を行うほか、ネコリパの商品コーナーを設けるなど、保護猫支援活動の取り組みを行っている。

そもそも島忠はホーム用品やペット用品のほか、生体販売、つまりペットそのものの販売を行う業者。そのため、ビジネスの視点から言えば、ネコリパやTCGのような保護猫を譲渡する組織とは競合関係になるはずだ。なぜ、支援活動を行うことになったのだろうか。

島忠でペット用品を担当する山下勝利氏。日本での殺処分の現状を知ってから、保護猫活動に興味を持つようになったという(筆者撮影)

「ペット用品部門の仕入れ担当者になるまで、猫が殺処分されている現状について知識がなく、また本当の意味で関心を向けていませんでした。

しかしさまざまな記事を読んだり、保護猫活動について調べるうちに、『何かできることがないか』と考えるようになりました。TCGの山本さんも著書に書いているように、『足りないのは愛情でなくシステム』。私だけでなく、ペットにかかわる現状が知られていないことが、動物保護のシステムが広まらないひとつの原因だと思えたのです」(島忠ホームセンター商品部の山下勝利氏)

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