iPhone Xファミリーが遂げた超絶進化の全貌

フィル・シラー氏が明かすカメラ機能の秘密

「iPhoneを企画・開発していく中で、スティーブ(=故スティーブ・ジョブズ氏)と“このコンピュータ(スマートフォン)は、これまでにないほど、あらゆる人たちに普及していくだろうが、アップルだけであらゆる人たちに最適な製品を届けられるはずがない”と話していた。想像もできないほど大きな市場になっていく。その中で、自分たちがもっとも得意とする領域で勝負しようと考えた」(シラー氏)

もっとも得意とする領域とは、“美しいデザイン”“きめ細かな使いやすさへの配慮”“細かなディテールへのこだわり”などだが、そこには“ハイエンド”あるいは“プレミアムセグメント”といった意識はまったくないという。

ユーザー体験を最大化するために、どういった選択がもっともよいかを検討、選択していった結果、XS/XS Maxが生まれ、また別の切り口でまとめたときにXRが生まれる。そこに価格帯を意識した“上・下”の意識はないとシラー氏は言う。

カラバリが用意され、iPhone Xファミリーとしては安価な「iPhone XR」(筆者撮影)

「もちろん、価格を意識して安価な製品を作ることもできるだろう。しかしわれわれには(何かを犠牲にして)チープな製品を作るDNAはない。“その時点では満足”だと思って安価な製品を買っても、数年後に不満を抱えて買い替える頃には残念な思いしか残らない。そうした製品を作りたくはない」(シラー氏)

だからこそ、シングルカメラでiPhone Xファミリーとしては安価なiPhone XRにも、大型かつ高精細なディスプレー、優れたスピーカー音質、最新のA12 Bionicなど、上位モデルと同等のハードウェアに加え、液晶採用モデルならではの長時間バッテリー駆動という特徴がXRに加えられている。

「iPhone SE」の復活はあるのか?

コンパクトかつベーシックな端末としてiPhone SEの復活を望む声もある。iPhone XファミリーにもiPhone SEのようなコンパクトモデルは必要ではないか?と率直にシラー氏に話を振ると、次のような答えが返ってきた。

「同様の話は日本だけではなく、外から聞こえてくる。確かにiPhone Xファミリーの画面サイズは大きいが、スクリーンの隅々まで表示エリアが広がっているため、手に取ってみるとすっぽりと手のひらに収まり、簡単に操作できる。手頃なサイズ感とディスプレーの大きさの両立を目指したものです。まだ手に取ったことがない皆さんには、ぜひ、スペックの数値にこだわらずに店頭で操作したときの感触を確かめてほしい」

昨年、オリジナルのiPhoneから10年が経過してiPhone Xが生まれると同時に、iPhone8が誕生。iPhone Xの要素は確かに盛り込まれていないが、オリジナルiPhoneとしては、あらゆる要素が詰め込まれた完成度の高い製品として、今も売れ続けている。

初代iPhoneが登場した当時、携帯電話業界の中でアップルは明らかに異端児であり、製品はカッティングエッジだった。しかし、今やiPhoneは携帯電話端末市場の“ど真ん中”にある製品、いわばスタンダードとなった。

世の中の中心、スタンダードに求められる、“変わらぬ価値と使いやすさ”を提供し続けつつ、“新領域を開拓すべくイノベーションを続ける”。この相反するかのように思えることを、彼らは両立できるだろうか。

次ページiPhone Xは「新しいイノベーションの基礎」
ビジネスの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 検証!ニッポンの労働
  • 岐路に立つ日本の財政
  • あの日のジョブズは
  • 西村直人の乗り物見聞録
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
文具業界を揺るがす動乱<br>「コクヨvs.プラス」の全真相

昨年末のぺんてる株をめぐる文具2強によるプロキシーファイト(委任状争奪戦)。両社のバトルには、8月に設立したプラスの卸子会社が2年前の計画で一度頓挫していたことにも伏線が。縮小する文具業界再編をめぐる壮絶な主導権争いに迫ります。