iPhone Xファミリーが遂げた超絶進化の全貌 フィル・シラー氏が明かすカメラ機能の秘密

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iPhone Xファミリーでは、ホームボタンが撤廃された(筆者撮影)

iPhone Xファミリーは、いずれも端から端までいっぱいに画面を広げ、それによって配置が不可能になったホームボタンの代わりに下端からのスワイプ操作を盛り込んでいる。その結果、端末全体に広がるディスプレーにより表示面積の拡大がもたらされた。

同様のディスプレーはAndroidを採用するライバルも採用しているが、iPhoneは操作やアプリの振る舞いに一貫性を持たせるため、ホームボタンを用いたデザインを踏襲してきたが、iPhone Xファミリーではそうした制約を取り払った。

もうひとつは、顔の形状を認識して個人を特定できるTrue Depthカメラの搭載である。利用者に向けられたインカメラに被写体の形状を認識する機能を加えたことで、ホームボタンに備えられていたTouch ID(指紋認識による個人識別)に頼らなくとも、素早く確実な個人の識別が可能になった。また、インカメラを用いたポートレートモードや顔の表情を読み取って3Dモデルが動く“Animoji”“Memoji”といった機能も実現している。

そして最後に昨年のA11 Bionic、今年のA12 Bionicと進化させてきたアップル独自設計のSoC(システムプロセッサー)に組み込まれたニューラルネットワーク処理に特化したニューラルエンジンというプロセッサーとその活用である。

もっとも、シラー氏は進化の方向を示しているだけだとも断っている。上記要素のみがiPhone Xファミリーのアイデンティティではなく、今後も新しいテクノロジーを継続的に導入することで発展させていく新たなスタート地点ということだ。

iPhoneに”廉価版”という考え方はない

そうした“iPhone Xの系譜”でいくつかのバリエーションが登場するだろうという予測の中、iPhone Xの後継モデルとして正常進化版や大画面版に加え、“廉価版”が登場するという予測があった。

最終的に、iPhone XSやXS Maxよりもアフォーダブル(購入しやすい)でカラフルなiPhone XRが登場したが、いわゆる“廉価版”ではなく、上位モデルとまったく同じプロセッサーを搭載し、カメラ性能も同レベルが確保されていた。“よりアフォーダブル”ではあるが廉価版ではない。

一方、市場を見渡すとスマートフォン市場の成熟とともに、消費者の目は“価格”を重視するバリューセグメントと、“デザイン/スタイルとカメラ画質”にこだわるプレミアムセグメントに2分化されているように見える。

しかし、そうした市場のセグメント化に関して、アップルはまったく興味を持っていないという。シラー氏によると、製品のスペックや機能ではなく、顧客の利用体験こそが重要であり、その質を担保したうえでいかに“アフォーダブル”にするかが開発時のテーマだと話す。

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