iPhone Xファミリーが遂げた超絶進化の全貌 フィル・シラー氏が明かすカメラ機能の秘密

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「先進的な技術をアフォーダブルな製品に応用し、皆さんのライフスタイルの中に取り入れてもらえるようにすることこそがアップルのミッションだ。確かに、ここ数年のスマートフォン市場は成熟し、進化が滞っているという声もある。(改良・改善の連続で)イノベーションが起きていないという批判もあった。しかし、iPhone Xは、まさに新しいイノベーションの基礎となるために作った製品で、さらに今年発表した製品(iPhone XS、iPhone XR)で"正しい方向に向かっている"と実感している」(シラー氏)

シラー氏が言う“正しい方向”とは、Face IDとともに導入した“ほぼベゼルレス”のディスプレーの導入に加え、増加したトランジスタ数の多くをニューラルネットワーク処理向けに注ぎ込んだA12 Bionicへの投資といった部分だろう。

ただし、ニューラルネットワーク処理に特化した処理回路(ニューラルエンジン)への投資が花開くには、サードパーティ製アプリケーションによるサポートが不可欠になってくる。そしてそれには、ある程度の時間が必要なことはアップル自身もわかっているはずだ。

しかし、それでもニューラルネットワーク処理を“端末内”で完結させる能力を高める投資に迷いがないのは、機械学習によるユーザー体験向上は(ユーザーが自ら利用したいと考えない限り)クラウドにデータ送信せずに達成されるべきと考えているからだ。

「プライバシーを守る権利は、人権の中でも基本的なものだ。われわれは、ユーザーがプライバシーを侵されないまま実現できる機能、向上するユーザー体験を優先している。何かを達成するためにプライバシーを差し出すことを強要してはならない。だからこそ、(独自設計のプロセッサーである)A12 Bionicでニューラルエンジンの強化を図ったのだ」とシラー氏は力説する。

「端末内」で機械学習を活用した機能を実現する

ニューラルエンジンの活用は、開発者向けに「Core ML」というAPIを通じて提供されており、すでに対応アプリも登場しているが、最新のA12 Bionicの能力を生かした機能という意味では、アップルが率先して“何ができるか”という事例を示さねばならないだろう。

「ニューラルエンジンはカメラの機能性、画質を高める部分で大いに活用しているが、それだけではない。使用状況から予測分析して、バッテリー駆動時間が伸びるようシステム全体が振る舞ったり、あるいはクラウドにアップロードする必要なくフォトライブラリーの画像を判別する。クラウドに上げる必要はなく、判別した結果を検索したり、あるいは自動的に動画にまとめたり。これらはいくつかの機械学習モデルを組み合わせたものだが、すべて“端末の中”で処理される」(シラー氏)

すなわち、端末内だけで処理を完結できるため、クラウド型サービスで懸念されるプライバシー問題と、アップル製品は無関係だということだ。

「(クラウドへのデータアップロードを伴わない)端末内で機械学習モデルを活用した機能の実現、性能の強化に引き続き力を入れていく」と話した。

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