塩と砂糖を見分けられない人の固すぎる思考

「知識」は時にあなたの足かせになる

塩と砂糖、あなたならどうやって見分けますか?(写真:bowie15/iStock)
学歴や知識はあっても、なぜか成果を出せない人。彼ら彼女らに欠けているものは何か? 230万部を超える大ベストセラー『思考の整理学』著者である、外山滋比古氏が「知識に縛られる人」の問題点について解説します。

「知識は力なり」といったのはイギリスの哲学者、フランシス・ベーコン(1561~1626年)だった。 日本でいえば、徳川家康(1542~1616年)と同じぐらいの時代に生きたベーコンの言葉は世界中の人々に影響を与え、近代科学の精神を体現した最初の思想家ともいわれている。

ベーコンの考えに基づいて、当時の自然科学の研究者たちはいくつかの画期的な発見もしたが、社会で広く理解された意味としては「知識=すでにある情報を覚えること」が重要だという程度のものになってしまった。

ベーコンのあとに、フランスの哲学者・数学者パスカル(1623~1662年)が、 かの有名な「人間は、考える葦(あし)である」という言葉を残した。知識よりも考える力のほうが大事だという話で、これも後世に大きな影響を与えた。

「知識は力なり」

「人間は、考える葦(あし)である」

どちらの言葉も真理を突いているのだが、「知識」と「思考」を両立しようとすると、 なかなかうまくいかない。特に日本では知識ばかりが優先されて、思考が軽んじられる時代が長く続いた。明治時代に入り、形の上では欧米の教育制度を参考にして、日本でも初等教育が整備されたが、その内容は知識を教え込むことが中心だった。何も知らない子どもたちには、 まず知識を与えることが重要という考え方である。

ここに大きな間違いが潜んでいる。

本来であれば、知識を詰め込んだら次の段階として、「思考力」を育てるプロセスが始まるはずだが、そうはならなかった。中等教育以降も知識が最重要視され、考える力を養う場は生まれなかった。

知識は必ずしも力ではない

実はこれは当然の成り行きである。知識には思考を妨げるという弊害があるのだ。 知識とはいわば、「他人がすでに考えた結果」であり、それを蓄えるほどに、自分では考えなくなる。逆に、知識がない人ほど自分で考えるしかなくなる。

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