徳川家の末裔「95歳」で作家になった女の一生 「徳川おてんば姫」の息子が語る母の姿
「母は元気でしたね。車の運転は84歳までしてましたし、テニスは86歳までしてました。そして10年前から出版社さんから話をいただいて、自伝を書き始めました(当初は東京キララ社ではない出版社から話が来ていた)」
本を書き始めてからは十数回入院したという。大腿骨や背骨を骨折したこともあった。90歳を超えて、さすがに車いすを手放せなくなっていた。
それでも「本を書き上げる」という意思が、久美子さんを支えたのかもしれない。今年の3月までは非常に元気に過ごしていた。そして、95歳にして著書を書き上げ、発表することができた。
だが本が出版されてすぐ、久美子さんは体調を崩してしまった。緊張の糸が切れてしまったのかもしれない。
「まるで夢のようね」
入院が続き、記憶も混沌とした時に、久美子さんが
「帰りたい」
と言った場所は、第六天でも横浜の病院でもなく、現在住んでいる団地だったという。
病床で、純さんの息子さんが、ネットニュースやSNSに寄せられたコメントを伝えた。
本の感想は600件を超えていて、ほとんどが好意的な意見だった。
「おばあちゃんの本を読んで、みんな感動しているよ」
と語りかけると、久美子さんは
「まるで夢のようね」
と答えたという。
まるで映画のような人生を送った久美子さんだが、つねに地に足を着けて生活をしてきたんだなと思った。
年表だけを見ると、どんどん不幸になっているようにも思えるが、実際にはそんなことはない。
もちろん、夫を失ったり、最初の子どもと別離しなければならなかったりと不幸はあるが、それに引きずられて人生を見失うことはなく、その時その時を一所懸命、幸せに生きてきたんだな、と感じた。
簡単にまねできることではないけど、僕もなるべくくよくよせず幸せに生きたいなと思った。
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