徳川家の末裔「95歳」で作家になった女の一生 「徳川おてんば姫」の息子が語る母の姿

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2016年谷中の徳川慶喜墓所にて(写真:井手純)

「母は元気でしたね。車の運転は84歳までしてましたし、テニスは86歳までしてました。そして10年前から出版社さんから話をいただいて、自伝を書き始めました(当初は東京キララ社ではない出版社から話が来ていた)」

本を書き始めてからは十数回入院したという。大腿骨や背骨を骨折したこともあった。90歳を超えて、さすがに車いすを手放せなくなっていた。

それでも「本を書き上げる」という意思が、久美子さんを支えたのかもしれない。今年の3月までは非常に元気に過ごしていた。そして、95歳にして著書を書き上げ、発表することができた。

だが本が出版されてすぐ、久美子さんは体調を崩してしまった。緊張の糸が切れてしまったのかもしれない。

「まるで夢のようね」

入院が続き、記憶も混沌とした時に、久美子さんが

「帰りたい」

と言った場所は、第六天でも横浜の病院でもなく、現在住んでいる団地だったという。

病床で、純さんの息子さんが、ネットニュースやSNSに寄せられたコメントを伝えた。

本の感想は600件を超えていて、ほとんどが好意的な意見だった。

『徳川おてんば姫』(東京キララ社)書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

「おばあちゃんの本を読んで、みんな感動しているよ」

と語りかけると、久美子さんは

「まるで夢のようね」

と答えたという。

まるで映画のような人生を送った久美子さんだが、つねに地に足を着けて生活をしてきたんだなと思った。

年表だけを見ると、どんどん不幸になっているようにも思えるが、実際にはそんなことはない。

もちろん、夫を失ったり、最初の子どもと別離しなければならなかったりと不幸はあるが、それに引きずられて人生を見失うことはなく、その時その時を一所懸命、幸せに生きてきたんだな、と感じた。

簡単にまねできることではないけど、僕もなるべくくよくよせず幸せに生きたいなと思った。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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