徳川家の末裔「95歳」で作家になった女の一生 「徳川おてんば姫」の息子が語る母の姿
ただ久美子さんはマイナスな面を一切、引きずらない人だった。
幼い頃に学んだ帝王学で
「人を不快にさせることは言わない」
とたたき込まれているのもあったかもしれないし、生来のポジティブな性格というのもあっただろう。
皆に愛された慶喜の孫
どこにいても、すぐに友人を作ることができた。デイサービスでもすぐに友達ができ、介護士の人たちにも愛された。
団地で行われた敬老の日の趣味の展示会では、書を出品した。久美子さんの書く有栖川流の書はすばらしく、みんなを仰天させたという。
「どういう人なんだ?」と聞かれ、
「実は慶喜の孫なんだ」
と言うと、皆驚いた。それでも久美子さんは一切偉ぶらず、近隣住人皆に愛されたという。
会話の流れで、たまには第六天に住んでいたことを思い出すこともあったが、
「あの頃は、なんだか夢みたいな話よね」
とひとごとのように語っていたという。
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