徳川家の末裔「95歳」で作家になった女の一生 「徳川おてんば姫」の息子が語る母の姿
現金があると機嫌が良い人だった。バブル時代は銀行員が「お金を借りてください」と言って現金を持ってきましたが、どこかで散財してしまっていた。
「どこでお金を使ったのか、母にもハッキリはわからないんですよ。台湾や韓国でゴルフとかしてたみたいですけど……それでそこまでお金がなくなるとも思えない。結局は株で失敗したとかじゃないかな?と思います。バブルがはじけたタイミングでもありましたし。結局、父が亡くなった後に残ったのは2億数千万円の借金でした」
所持していたマンションも競売にかけられた。だがまだ1億円以上の借金が残った。
結局、アパートに移り住んだ。
汗水流して稼いだ金じゃないから
そんな平成15(2003)年、姉である高松宮妃殿下が亡くなった。久美子さんの元には6億円の遺産が入った。借金を返しても、一生お金には困らない額が残る。
「いきなり6億円振り込まれて、僕(純さん)は自分のお金のような錯覚してしまったんですよね。『もう一生、何もしなくて食っていけるぞ!!』って。3000万円の自動車を買って、毎晩銀座で遊んでいましたね。月、最低でも300万円くらい遊んでたんじゃないかな? 僕自身はお酒飲めないんですけどね。本当にどうしようもないバカ息子でしたね。
宝くじが当たって身を持ち崩した人の話はよく聞いてて、なんでそんなふうになっちゃうんだよって思ってたけど、いざわが身になると同じような羽目になるんですね……。汗水流して稼いだ金じゃないから、狂ってしまうんです」
派手に遊んでいる純さんの元には、悪い連中が近づいてきた。純さんを社長にして、
「海外で金貸しをしよう」
「ギャンブル場を開こう」
と持ちかけてきた。純さんは、言われるままにハンコをついていただけだが、気づいたらすべて取られていた。詐欺なのだが、訴えるのは難しかった。
仕方なく、都内の都営住宅に移ったが、そこも家賃を払いきれず追い出された。
そしてなんとか安い物件を探し、現在の団地に引っ越してきた。
自然の多い、環境の良い団地ではあるが、もちろん第六天のお城に比べれば落差がある。
「おふくろは『最初からなかったものと思えばいいじゃない』って言ってくれて……。それがもう、つらかったですね。
『あんたのせいでこんな生活になっちゃったじゃない!!』って恨み言を言われても仕方ないのに、一度も言わなかったです。
ずっと世話することができたのはよかったですが、最後はもうちょっと良い生活させてやりたかったな……というのが心残りです」
純さんは話しながら思わず涙ぐんでいた。
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