引き抜きという「禁断の採用」はアリなのか 採用に苦しみ退職する人事担当者も出始めた

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当然ながら厳しい状況でもくじけずに、対策を講じている採用担当者もいます。先ほどの退職した採用担当とは別の知人で、社員紹介の活用や非正規社員から正社員登用を増やすなど、模索を続けて、頑張る採用担当者も知っています。ただ、その努力もなかなか実を結ばないのが実情。そんな、手詰まり感のある状況で、知人のSさんは、

「わが社の求める人材は社会に存在しないのではないか?」

と言い出しました。

求人サイトにエントリーしている人の過半数は40代以上

ミスマッチの問題もあります。求人サイトにエントリーしている人の過半数は40代以上と言われています。ところが、企業が求める人材の過半は35歳までの中堅若手クラス。この層において転職活動をしている人が明らかに少ないのです。

適したデータを見つけることができなかったので、取材などからの定性情報になりますが、このように人材エージェント各社で35歳以下の若手中堅人材の求職者数が増えないとの悩みを頻繁に耳にするようになっています。

この世代で極端に人数がいないわけではないのに、どうして求職者が少ないのか?

大企業から中堅企業まで分散した人材が貴重な戦力として各社で「抱え込まれている」、現在の人事的な言葉で説明するならリテンションが行われているのです。

リテンションとは人材を流出させないための防止策のこと。金銭的報酬と非金銭的報酬に大別され、経営層との対話機会や能力開発の機会を増やして、成長機会や責任感の醸成を促す取り組みを提供します。以前であれば、自分のキャリアなどは自身で考えるものとしたり、社員に対するケアが不十分であった会社が、手厚いケアをして意識が退職に向かないように取り組んでいるのです。

取材した製造業の会社では、若手中堅世代はもともと新卒採用時から少数の採用数であったため、人事部がきめ細かい人材開発やキャリアプランの支援などを行い、社員の退職を防ごうとしていました。

「人材が流失しても、代わりが採用できる状況でないことを十分理解しています」

と人事部も認識した施策を行っているようでした。同じように各社で貴重な人材として抱え込みが行われ、転職市場への流入が少なくなっているのかもしれません。ただ、それでも会社は成長のために足りないピースである若手中堅の人材を確保したいもの。どうすべきでしょうか?

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