中身の前に、まずやるなぁと思ったのは、デザインの“深化”だ。アテンザらしさを損なうことなく、より立体的な表情を描き出したフロントマスクはしっかりと新鮮味をアピールしている。全体のフォルムは当然変わっていないが、まだまだ古びた感じは皆無である。
インテリアのクオリティもグッと高まった。なんと6年間で2度目の全面変更となったダッシュボードはドアパネルから連続感のある繊細な造形で、クロームの入れ方もセンスがよい。アナログ感を残した精緻なグラフィックスのデジタルメーター、木目調ではなく本杢(ほんもく)を使ったトリムなどと相まって、上質な空間を作り出している。ヘッドアップディスプレイがウインドウ投影式になったのも、視認性だけでなくクラス感の演出という意味でポイントと言えるだろう。これまた新開発のシートに、ベンチレーション機能が用意されたのもうれしい。
これまでは正直、これがフラッグシップと言われてもイマイチ、ピンとこなかったアテンザ。しかしここにきて、ようやく内外装はそれにふさわしいものになったと言っていいのではないだろうか。
走りに関わる改良も多数、乗れば違いは歴然
アップデートされた走りも、そんな印象を裏切らない。変更点は、今あらためて「こんなに?」 というぐらい多く、例えば車体に関してはボディ剛性の向上、サスペンションジオメトリーの変更、新開発タイヤの採用、ステアリングマウントのリジッド化などが行われている。車体の基本骨格は変わっていないが、先述のスカイアクティブ・ビークルアーキテクチャーの開発で得た知見が、各所に活かされているという。またパワートレインも、2.5Lガソリンには気筒休止機構が付き、ディーゼルには急速多段燃焼技術が採用されるなど、用意される3種類のどれにも改良が加えられた。
走り出せば、もはや違いは明らか。しっとりとした手応えを得たステアリングフィールには、駐車場から走り出す瞬間から感動させられたほどだし、乗り心地も、これまでどうしても消えなかったコツコツ感がついに払拭されている。しなやかにストロークしながらも、高速域では目を見張るフラット感を示す乗り味、車体の大きさを忘れさせるような、すべてが手のうちにあると感じさせるコーナリングも、実にいい感じ。この走りっぷりには、上質という言葉を使っていい。
エンジンは、特にディーゼルの印象がよかった。従来の、特に発進時など低回転時における一瞬のもたつきが解消されて、スムーズに走り出すことができるようになったのだ。ガソリンは2.5Lに気筒休止を新たに採用しているが、乗っていてそれを意識させられることはなかった。もちろん、それはいい意味での話である。
後輪駆動化の話は今はまだ想像に過ぎないが、ともあれマツダが今後、もう少しプレミアムな領域で勝負していくという心づもりであるならば、アテンザの価値の引き上げがマストだったことは間違いない。いわゆるマイナーチェンジにもかかわらず、新型アテンザはそのタスクを見事にクリアしてみせた。これはなかなかできることではないはずだ。
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